
数多くのバトル漫画では、読者をワクワクさせるさまざまな工夫がされている。その中のひとつに強さの数値化というものがある。
これは、どのキャラがどれほどの強さを持つのかを目に見えて分かりやすくするためのものだ。それを知ることで絶望したり、倒すための目標にもなったりして、展開を盛り上げるための演出のひとつともいえるだろう。
他にも、一見弱そうに見えるキャラでも実はかなりの強さを持っていた!など、新たな発見につながる場合もあるから面白い。
そこで今回は、バトル漫画における強さの数値化について年代ごとに振り返っていきたい。
■はじまりは『キン肉マン』の超人強度?
バトル漫画がまだそれほど多く登場していない1980年代から、強さの数値化はおこなわれている。おそらく強さを初めて数値化したのは、ゆでたまごによる『キン肉マン』(集英社)ではないだろうか。
『キン肉マン』は、「超人強度」と呼ばれるものでそれぞれの強さをパワーという単位によって表している。これは、バッファローマンの規格外ぶりを示すために、彼とウォーズマンとの試合で初めて出てきたものだ。
キン肉マンたちアイドル超人の超人強度が約100万パワーなのに対して、バッファローマンは1000万パワー。これだけの差があると明確にしめすことで、バッファローマンの強さが表現されている。
その後、鳥山明さんの『ドラゴンボール』(集英社)に登場するおなじみのアイテム・スカウターにより、バトル漫画での強さの数値化が一気に進んだのは言うまでもない。
スカウターはサイヤ人編で、ラディッツが地球に襲来した際に使用した特殊な機械だ。機械を通して相手を見るだけで強さが数字で表示される。初めて戦闘力を測られた農夫の戦闘力は5しかなかったが、一般人はこの程度ということだろう……。
このアイテムのおかげで本作では、キャラたちがそれぞれどれほどの強さを持っているのかが分かりやすくなった。フリーザが「わたしの戦闘力は530000です」と不敵な笑みを浮かべるシーンに衝撃を受け、絶望した読者も多いはずだ。しかしそのうち戦闘力のインフレが起こって、スカウターは登場しなくなってしまった……。
■『幽☆遊☆白書』妖力値に『ONE PIECE』道力なども…
1990年代は、先ほど紹介したスカウターと同じように、強さを数値で分かりやすく表すものがいくつか登場した。
冨樫義博さんによる『幽☆遊☆白書』(集英社)の魔界統一トーナメント編では、妖力をベースとして戦うので、「妖力値」というものが登場した。この妖力値の大きさが強さに比例しているのは言うまでもない。
そんな妖力値もスカウター同様、機械で測れるようになっていた。ちなみにこの機械では、妖力値のほかに体力、攻撃力、守備力、特殊能力が計測できる。まるでゲームのステータスのようだった。
それによっていろいろなキャラの強さがわかるようになったが、黄泉や軀、雷禅といった強キャラの妖力は当たり前のように100万超え。ただしあくまでこれは通常時の数値であり本気を出せば変動もするし、雷禅に至っては弱体化した状態でこの値なのだから恐ろしい……。
尾田栄一郎さんによる『ONE PIECE』(集英社)では、強さの目安のひとつとして懸賞金の金額が挙げられる。金額が高ければ高いほど周りから強さを認められることになり、その金額だけで皆を震え上がらせる者もいる。
しかし、悪魔の実の能力には相性などもあるので、必ずしも懸賞金が強さそのものにつながらないともいえる。能力次第では、懸賞金で見たときの「格下」が「格上」を倒す可能性もあるのだ。
個人的には本作では、「道力」の方が強さを分かりやすく表していると思う。これはCP9が戦力を測る時に使用している指標である。基準としては、武器を持った衛兵1人の強さが10道力ということらしい。
作中でロブ・ルッチは4000道力とされており、その数値の大きさから圧倒的な強さが伝わってくる。そして、それを倒してしまったルフィもスゴい……。
他にも武井宏之さんによる『シャーマンキング』(集英社)では、巫術を使うための力の値を「巫力」として表している。オリジナルの単位を使って数値化するのは、『キン肉マン』からの流れでずっと続いているようだ。