1996年発売のゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』から始まり、日本を代表するコンテンツとなったポケモン。アニメの歴史も古く、1997年にはサトシ&ピカチュウがポケモンマスターを目指す『ポケットモンスター』がスタートしている。
サトシの冒険を語る上で欠かせない存在が、ムサシ・コジロウ・ニャースからなる“ラブリーチャーミーな敵役”ロケット団だ。悪役ながら憎めない彼らは視聴者人気も高く、ロケット団がメインのエピソードもたびたび登場した。
今回はその中から、ロケット団の絆の深さや、意外な「人の良さ」が現れていたエピソードを振り返ろう。
■人間味あふれる美しき悪女ムサシ!涙必至のハピナス・ドクケイル回
まずは、毒舌ながら人情味のあるムサシの魅力が描かれた「ハピナスのハッピーナース!」のエピソード。ムサシがロケット団に入る前、看護師を目指していたことが語られる貴重な回だ。
あるとき、腹ペコでポケモンセンターに忍び込んだムサシは、かつて彼女がラッキー専門の看護学校に通っていた頃の親友・ラッキーが進化した「ハピナス」と再会する。
再会を喜ぶ両者だが、ハピナスが腹ペコの彼らに食料をほぼ全部あげてしまったため、女性医師のジョーイさんに詰められてしまう。ハピナスを心配したムサシは自ら罪を被り、自分たちが脅して食料を奪ったとサトシやジョーイさんの前で告白し、コジロウとニャースも「ムサシの友だちの危機だ」「貰ったってバレたら悪役の名が廃る」と名乗り出るのだった。
何も知らずに駆け寄ってくるハピナスに、泣く泣く軽い攻撃を入れたムサシは、サトシを「早くいつもみたいに攻撃してこい」と煽って吹き飛ばされ、見事ハピナスを守った。
食料を失いながらも、「親友は遠くにありて想うもの。これで良かった」と語るムサシ。かつて看護師を志していたという意外な過去と、そして悪役を演じて友を守るムサシたちの姿に胸が熱くなってしまうエピソードだった。
ムサシの過去が語られたエピソードといえばもう一つ、「さよならドクケイル!」も欠かせない。ある日、ムサシが手塩にかけて育てたメスのドクケイルと湖でコンテスト練習に励んでいると、オスのドクケイルが現れ、二匹が恋に落ちてしまう。くしくもそこはドクケイルが“つがい”で渡りをする湖だった。
実はムサシはかつてアイドルを目指しており、夢を追うために恋を諦めた過去がある。その辛い経験を思い出し、ムサシはドクケイルの幸せのためにと「愛する人と一緒に幸せに生きるのよ」と手放す決意をする。
ムサシは、それでも離れないドクケイルの前で泣きながらドクケイルのモンスターボールを壊して「おまえの帰るモンスターボールは無いのよ! 」と涙を流しながら突き放すと、旅立つ後ろ姿に「私の分まで思いきり恋して、幸せになんのよ」とエールを送るのだった。このエピソードでは、クライマックスに小林幸子さんが歌う『風といっしょに』が流れる。ムサシの若かりし日の姿も貴重な、感動的なエピソードだ。
■実は超お金持ち!ポケモンを愛するコジロウの感動回
悪役ながら、誰よりポケモン愛が強い優しい男・コジロウ。ポケモンたちもまたコジロウを愛し、深い絆を築いていた。そんな愛情深い人物だからこそ、別れのエピソードは泣けるものが多い。
印象深いのは、溺愛するチリーンとの別れを描いた「マネネ登場!休息の館!」だ。もともと体が弱いチリーンの容体が悪化してコジロウの別荘(城)を訪れたロケット団は、同じく体調不良のゴンベの休養で訪れていたサトシ一行と出会う。
コジロウは朝まで付きっきりでチリーンを見守るものの回復せず、じいやたちから別荘に置いていくようアドバイスを受ける。大泣きして一度は拒否するも、コジロウはチリーンを想って預けることに。
モンスターボールを手放す瞬間まで、大好きなコジロウにか弱い笑顔を向けるチリーンに切なくなるが、それを見ていたマネネが自らモンスターボールに飛び込んで仲間になるという嬉しい出来事も起こった。
また、サボネアとの別れを描いた「ナタネとサボネア!さよならは誰のため!」も神回だった。あるとき、くさタイプの使い手のジムリーダー・ナタネと再会したサトシ一行とロケット団。ナタネはコジロウのサボネアを可愛がり、サトシチームとのタッグバトルを提案する。
サボネアのポテンシャルを見込んだナタネは、試合後コジロウに「サボネアを預けてみない?」と持ちかける。コジロウはこれを拒否し、サトシの協力を得てドレインパンチ取得に意欲を燃やすサボネアの特訓を始める。だが、何度やっても上手くいかず、次第にサボネアは自分といるよりもナタネといるほうが強くなれるし、幸せになれるのではないかと考え始めるのだった。
ボロボロになって特訓を続ける姿を見たコジロウは、かつての楽しい日々を思い出しながらもナタネに託す決心をする。サボネアは、コジロウに「いくんだサボネア、そして強くなれ!」と背中を押され、悲しみを乗り越えナタネのもとでさらなる高みを目指すのだった。