■タイトル画面すら省略された『ドラクエ3』

 ファミコン版『ドラクエ3』には、タイトル画面やオープニングアニメーションが存在しない。黒い画面に「DRAGON QUEST III」と表示されるだけで、音楽もなければ動きもないシンプルなもの。本来はオープニングを取り入れる予定だったものの、容量の限界により断念された。

 後に発売されたスーパーファミコン版では、ついにオープニングアニメーションが導入。勇者の父・オルテガがバラモス退治のためアリアハンを出発し、世界を巡り、火山でモンスターと戦う場面が描かれている。その戦いでオルテガが火口に落下し、死亡の知らせが家族に届けられるという、ドラマティックなストーリーが展開されている。

 また、海外のファミコン版『ドラクエ3』では、火山でのオルテガと魔物の戦いを描くプロローグシーンが追加され、よりドラマティックな演出が施されている。当時の技術的な制約で生まれなかった演出が、後のリメイク版でようやく実現されたわけだ。

 こうした数々の工夫と涙ぐましい努力が詰まった『ドラゴンクエスト』シリーズは、ゲーム史に残る傑作として語り継がれている。わずかな容量の中で、いかにしてプレイヤーを魅了する世界観を構築し、限られたリソースで最大限の表現を追求したのか。夢と冒険を詰め込もうとしたその熱意がなければ、稀代の名作は生まれなかっただろう。

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