大ヒットの陰に数々の工夫…ファミコン版『ドラゴンクエスト』容量削減のための「涙ぐましい努力」の画像
『ドラゴンクエスト』(編集部撮影)

 11月14日にHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売、2025年には『ドラゴンクエストI・II』のリリースも予定されており、往年のロトシリーズが新しい形で蘇ろうとしている。

 1980年代後半にファミリーコンピュータで登場した『ドラクエ』シリーズだが、数ギガバイトもの容量が当たり前の現在のゲームとは違い、当時の容量はたったの数十キロバイトから数百キロバイトと、現代のスマホ写真1枚にも及ばないほどだった。

 この限られた容量の中に冒険とファンタジーの世界を詰め込むため、開発チームは驚くべき工夫と涙ぐましい努力を重ねていたのだ。

 今回は、そんなファミコン時代の『ドラゴンクエスト』シリーズの容量削減の努力とアイデアについて紐解いていく。

■グラフィックの工夫 「カニ歩き」と色違いモンスター

 まず、初代『ドラゴンクエスト』といえば、主人公が正面を向いたまま四方向に移動する「カニ歩き」が特徴的。通常、キャラクターが話しかける際は相手の方向を向くものだが、当時はそれができなかった。

 代わりに、コマンドで「きた」や「ひがし」などと入力し、方向を指定する形式が採用されている。これは、キャラクターの横向きや後ろ姿のグラフィックを用意せずに済ませることができ、限られた容量を節約するための工夫だ。

 また、『ドラゴンクエスト』シリーズには、鳥山明さんデザインの愛らしいモンスターたちが登場するが、これらも容量節約の対象だった。

 同じ形状で色だけが異なるモンスターが多く見られるのは、容量節約の工夫の一環。例えば、青色のスライムとオレンジ色のスライムベスは、デザインはそのままに、色を変えることで別のモンスターとして登場している。

 このように、見た目のバリエーションを増やしつつ、グラフィックデータの量を減らす工夫が、ファミコン時代には随所に見られた。

 実際、初代『ドラゴンクエスト』の容量はたったの64KB。当時のファミコンカートリッジの限界に挑みながら、冒険の世界を詰め込んでいたのだ。

■カタカナが50音揃っていない!文字制限のアイデア

 グラフィックだけでなく、文字表現においても容量削減の工夫がされている。当時のプログラマーであるゲームクリエイター・中村光一さんによれば、ファミコンの容量制限の影響で、カタカナ全50音をすべて表示するのは難しかったという。そこで、『ポートピア連続殺人事件』で使用した「よく使う20文字のカタカナ」を『ドラゴンクエスト』に流用したそうだ。

 たとえば、初代『ドラクエ』では、「ク」は「よく使う20文字のカタカナ」にリストアップされていないため、「ダー”ク”ドラゴン」を「ダー”ス”ドラゴン」と命名したエピソードは有名だ。

 さらに、ひらがなの「り」や「へ」をカタカナとしても流用することで文字数を節約しており、これが『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』のキャラクター「アリーナ」や「クリフト」にも影響を与えた。

「アリーナ」は「ア“り”ーナ」、「クリフト」は「ク“り”フト」と表記されており、このように、細かな工夫が至るところに施されているのだ。

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