1983年に任天堂からファミリーコンピュータが発売されたことで、家庭用ゲーム機が日本中に普及して約40年。ちょうど現在の40〜50代あたりが、小学生の頃、放課後に友だちの家に集まり、ファミコンに興じていた世代だろう。
ロールプレイングゲームなどは1人のとき、もしくは兄弟だけの時間で冒険を進め、間違っても友だちの前でプレイを披露し、悦に入るなどということはしてはいけなかった。
そうなると遊ぶゲームはおのずと限られてくる。2人プレイができるものというのが大前提となり、アクション系のゲームを交代しながら遊ぶというのが暗黙の了解だった。特に2人同時プレイが楽しめるものが好まれる傾向にあったと思う。
だが、2人同時にプレイできるといってもけっして平和なものではなかったというのは、あの頃にファミコンに触れていた人にとっては共通の思い出のはず。「協力プレイ」という言葉はなんのその、2人で同時にコントローラーを操れるからこそ起こる容赦ない駆け引きが常で、現実世界でマジバトルに発展しかねないようなゲームもたくさんあった。
■いつの間にか対戦モードが勃発する『マリオブラザーズ』
『マリオ ブラザーズ』は1983年に任天堂から発売されたアクションゲームで、今や世界的な人気者となったマリオとルイージが兄弟で初めて登場した作品である。
このゲームは土管からカメやカニ、ハエなどの敵キャラが出てくるのだが、倒すには、床の下から叩いてひっくり返し、ひっくり返った状態で蹴とばす必要がある。
兄弟2人で協力して敵を倒していくことが目的なのだが、2人ばかりがクリアを目指して楽しんでいたら面白くない。
そこで、いつの間にか、マリオがルイージを床下から叩き、その勢いで敵にぶつけて死なせるといった対戦バトルモードに移行してしまうのである。
実際に兄弟でこのゲームをプレイしていた子どもも多いと思われる。ゲーム内と同じように兄にやられてしまい、泣くほど悔しい思いをした弟も多かったに違いない。
■相手を奈落の底に叩き落とす…『アイスクライマー』
このように協力プレイのはずが、いつの間にか足の引っ張り合いになる……というタイトルはファミコンでは少なくないが、やはり1985年の『アイスクライマー』(任天堂)も外せない。
同作はポポとナナという2人のキャラを操作し、ハンマーを使って天井の氷を壊しながら上へ上へと昇ってゴールを目指すアクションゲーム。
実は同作は、どちらかのプレイヤーが1つ上の階層に上がると1番下の階層が強制スクロールされ画面下に消えてしまう。このときもし1番下の階層にもう1人のプレイヤーがいた場合は強制スクロールに巻き込まれて死んでしまうのである。
そこで、上手なプレイヤーは片方のプレイヤーを放っておいて、さっさと上へ上へと上がって行ってしまう。
「ちょっと待ってくれー!」という声を尻目に次々と上に上がり、強制スクロールで消されてしまったプレイヤーのなんと多かったことか。
氷を壊すゲームであったが、友情をも壊すゲームとしていまだに語り継がれている名作である。
■かたくなにブロッケンJr.を譲らない『マッスルタッグマッチ』
前述した2作のような「協力プレイ」からのガチケンカ発展だけでなく、やはり対戦要素のあるゲームはいつの時代もハマってしまうもの。
そんなタイトルの1本として、1985年に発売された漫画『キン肉マン』をゲーム化した『キン肉マン マッスルタッグマッチ』(バンダイ 現:バンダイナムコエンターテインメント)に夢中になったという人は多いだろう。同作はキン肉マン、テリーマン、アシュラマン、ウォーズマンといった8人の超人からタッグを作り対戦をするという、これだけ聞けば普通の格闘ゲームのように思える。
ゲームの途中にミートくんが投げてくる命の玉(光る玉)を取ることで各超人がそれぞれ独自の必殺技を出すことができるが、その超人たちの必殺技の強さがあまりにも違いがありすぎるのである。
特にブロッケンJr.が出す毒ガス攻撃は飛び道具であり、当たるとダメージを受けるばかりか、その場で動けなくなる。連続して攻撃を当てることができ、完全なハメ技となっていた。
本来毒ガスを吐くのは父親のブロッケンマンなのだが、この際そんなことはどうでもいいぐらいブロッケンJr.が強すぎるのである。
ブロッケンJr.禁止令を出していた子どもたちも多かったと思うが、それでも頑なにブロッケンJr.を真っ先に選んで譲らない、そんな小学生がいたことも事実。苦い思いでなんとか命の玉をとるべく動くが、結果毒ガスを浴びまくりヘロヘロになったのはファミコン時代のいい思い出だ。