■オンリーワンを探し求めた『彼氏彼女の事情』の浅葉秀明

 最後は、『LaLa』で1996年から連載されていた津田雅美さんの漫画『彼氏彼女の事情』から浅葉秀明を振り返る。今作は、主人公・宮沢雪野が、大きな闇を抱える優等生・有馬総一郎の心を解放していく壮大な愛の物語。後半になるにつれ、暗く深みを増していく展開は、読者を惹きつけてやまなかった。

 浅葉は、「浅葉メリーランド」というハーレムを作る野望を抱く女好きだが、有馬と並ぶ高校きってのイケメンだ。当初は有馬を利用しようと近づくが、彼の闇に気づくと彼に興味を惹かれていく。有馬の中にある雪野への執着心といったネガティブな面に触れ、対極の光を放つ雪野の価値観も知った浅葉は、有馬の良き理解者となり二人の関係を支えるようになる。

 浅葉が女性を渡り歩くのは、家族との確執からくる寂しさが原因だった。誰にも本気になれないのは、全てを捧られるたった一人を求めているからである。浅葉の闇に気付いた名もなき女子が「有馬くんが女性だったら彼の運命の人だったかもしれない」と語っていたが、有馬と浅葉の間の出会いも運命だったのだろう。

 高校卒業間近、雪野の妊娠報告を受けた浅葉は、性別はまだという彼女にハッとした顔で「女の子だよ」と告げた。その時の“ずっと探してた 愛情の全てを捧げるたったひとり”というモノローグが伏線となり、16年後を描いた最終回でついに運命の人と思われる人物と出会う。

 その相手は、有馬と雪野の長女・咲良だった。とはいえ、歳の差があるうえに浅葉からすると娘のような存在。咲良の突然の告白に困惑するが、そんな浅葉に咲良は「お母さんのお腹にいたころから好きだったかもしれない」とさらに愛を囁く。浅葉は、「わたし以外の女(ひと)を好きになることできないくせに」という咲良に面食らいながらも、小さな幸せを感じるのだった。

 当て馬的ポジションになりがちな「主人公カップルの親友の男」だが、振り返ってみると彼らはみな魅力的な性格をしていた。今回紹介した3名のように、最後に幸せを掴んでくれるとファンからしても嬉しいものである。

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