切ないすれ違いや三角関係から胸キュンな愛の告白まで、読み手の心を揺さぶってやまない少女漫画の主人公たちの恋。彼女たちの恋愛関係に多くの少女たちが夢中になった。
そんな主人公を支えていたのが個性的な脇役たちの存在で、女子キャラ・男性キャラともに人気を集めた。中には、主人公よりも脇役から目が離せなかったという読者もいるだろう。
彼らは、時には主人公のライバルになり、時には良き理解者となりながら物語に華を添えてくれた。そして、脇役たちもまた恋に落ち、それぞれの幸せのために奔走していく。そこで今回は、主人公の「親友の男」が手にした“幸せな結末”の形を見ていこう。
■長年の片思いを実らせたマミリンにも涙…『天使なんかじゃない』の瀧川秀一
1991年から『りぼん』(集英社)で連載されていた矢沢あいさんの代表作『天使なんかじゃない』は、主人公・冴島翠と須藤晃を中心に描かれる作品だが、生徒会メンバーたちの恋愛模様も気になるものだった。その一人が、須藤晃の友人であり、私立聖学園第一期生徒会会計を務めていたイケメン男子・タキガワマンこと瀧川秀一だ。
タキガワマンには、後輩の原田志乃という美人の彼女がいた。高校に入っても関係は安定していたが、タキガワマンは生徒会でともに活動するマミリンこと麻宮裕子に次第に惹かれ、志乃との関係に溝ができ始めてしまう。
マミリンは、5年間もタキガワマンに片思いしていたクール美女。翠と友人になってから抑え込んでいた感情を出すようになり魅力が増していたので、個人的にはタキガワマンの気持ちもよくわかる。
二人が大きく進展したのは、翠がなくした天使の羽のネックレスを探すシーンだ。雨の中探し回り、体育倉庫でついにネックレスを発見したマミリン。涙を流しながら「翠… 今度こそ幸せになれるよね?」と言う彼女を見たタキガワマンは、思わずキスをしたのだった。
志乃は気持ちが離れていく彼を引き止めようとするが、すれ違いは深まるばかり。そして絆が戻ることはなく、志乃は彼に指輪を返して別れを決断した。
少し経ち、翠の家でタキガワマンにキスされたことを相談するマミリンの前に、タキガワマンが現れる。志乃との恋が終わり自分の気持ちに気づいた彼は、「自分でも…あきれてるんだけど なんかもう…コントロールがきかない 好きだ…」と告白し、ついに結ばれるのだった。
■主人公カップルに翻弄された部分も…?『ハンサムな彼女』の可児収
芸能界で繰り広げられる10代の刺激的な恋を描いた、吉住渉さんの『ハンサムな彼女』(1988年~)。仕事×恋愛という当時の少女漫画では斬新な設定で大ヒットした名作だ。メインはもちろん主人公の女優・萩原未央と演出家の卵・熊谷一哉の関係だが、二人に深く関わる一哉の親友のカメラマン・可児収も印象的である。
社交的なうえに洞察力が鋭い収は、未央の変化を捉えては不器用な一哉に何かとアドバイスをしていたが、次第に自分も未央に惹かれてしまう。未央が一哉に振られたことを知った収は、「俺が忘れさせてやる」と告白し、苦しんでいた未央は、想いを断ち切るためにそれを受け入れた。収から言いだしたこととはいえ、「忘れさせて」と好きになっていない状態で付き合う未央も、冷静に考えるとすごい。
収は未央の本心を知りながらも彼女を大切にし、ファーストキスも奪う。独占欲を見せるあたり、本来は愛情深く重いタイプなのかもしれない。だが、いつまでも一哉を引きずる未央に感情を爆発させて別れを迎え、それ以降は失恋の傷を抱えながら一哉と未央を結びつけるために動くようになる。
番外編『OSAMU』では、そんな収の恋の転機が描かれた。初めて本気になった未央への失恋がトラウマになり、遊びの恋に走っていた収は、何かと突っかかりながらも自分を長年好いてくれていた菊池理花のこともぞんざいに扱ってしまう。
だが、理花が自分のあげた安い指輪を付け続けている健気な姿を見て、彼女を意識しだす収。理花のピンチに駆けつけると、「その素直じゃないとこが可愛い…なんか思えてきたりしてんのや」と告白し、新たな”本気の恋”に踏み出すのだった。