■しつこく2人を追い詰める女性『この世の果て』ルミ

 『この世の果て』は、1994年1月からフジテレビ系列で放送された月9ドラマだ。

 物語は、ホステスとして働くまりあ(鈴木保奈美さん)と、元ピアニストの高村士郎(三上博史さん)の、心に深い傷を抱えた2人の激しい恋愛を描いている。

 本作でひと際強烈なキャラクターとして登場するのが、横山めぐみさん演じるクラブの人気ホステス、ルミである。彼女は愛を信じられない冷酷な女性で、まりあに対して強い嫉妬心を抱いていた。そのため、真剣に愛し合うまりあと士郎の関係を引き裂こうと、執拗に動くのだ。

 ルミはまず、士郎を偶然助けたことを利用し、あたかも彼と深い関係にあるかのように装い、まりあにダメージを与えていく。さらに、士郎に対して「まりあは神矢征司(豊川悦司さん)と頻繁に会っている」などとそそのかし、彼の心をかき乱すのだ。

 それでもまりあと士郎の絆は壊れない。これに苛立ったルミの行動はますます過激さを増していき、最終的に士郎を薬物中毒に陥らせる。そして士郎はまりあに対して暴力を振るうようになってしまうのだ。

 ギラギラとした目つきでまりあを不幸に陥れようとする反面、士郎に対しては優しい声とまなざしで誘惑し、自身の手中に収めようとする……横山さんの迫真の演技が、ルミの常軌を逸した怖さをいっそう引き立てており、視聴者に強い印象を残した。

 当時ドラマを見ていた筆者は、最初はルミのことがただただ嫌いだった。しかし彼女のあまりの狡猾さ、残忍さに、彼女が現実に存在する人物であったならどれほど恐ろしいことかと、恐怖を感じたのを覚えている。

 

 野島作品に登場する怖すぎるキャラたち。現実社会ではなかなかお目にかかれない強烈なキャラクターばかりだが、野島作品に登場すると自然に溶け込んでしまうのが凄いところだ。

 野島さんは現在脚本だけでなく、絵本や小説、漫画の原作なども手がけている。今後も彼が描く世界に注目していきたい。

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