名作漫画に登場する主人公カップルのなかには、両思いなのになかなか結ばれない……という展開がたびたび見られる。もちろんそんな恋愛模様も作品の見どころの一つではあるが、はたから見れば絶対に付き合えるように思えるのに、恋愛成就まで発展しないのでヤキモキしてしまうものだ。
そこで、序盤でかなり良い雰囲気になっているのになかなか付き合えない名作漫画のヒーローとヒロインの恋愛成就未遂のシーンを振り返ってみたい。
■早くも獠の気持ちがバレることに? 残念な神回『シティーハンター』
北条司氏の『シティーハンター』にも名物カップルが登場する。それが、主人公・冴羽獠と相棒・槇村香の名コンビだ。仕事は超一流だが女好きの獠と、いつも振り回されながらもハンマーで見事に撃退する香。
この2人の恋愛模様には、かなりヤキモキさせられた。関係を依頼人に聞かれた際にはいつもごまかしている2人だが、お互いを大切に思っていることがわかるエピソードは作中何度も出てくる。有名な“ガラス越しのキスシーン”で「ようやくか!」と、感動した当時の読者は多いだろう。
しかし実は、あのシーンが登場したのはコミックス31巻とかなり終盤だ。だが、意外にも物語序盤に獠が香に告白しかけていたシーンがある。それが6巻の「恋のフライングの巻」だ。
依頼人はエマリア共和国からクーデターにより逃亡してきた家庭教師の川田温子と、教え子の松岡拓也。少年ながら勘が鋭い拓也は、獠と香をなんとかくっつけようとする。
香を女として見ていないと豪語する獠だが、拓也は香の着替え写真を隠し撮りして獠に見せると見事にもっこり……。拓也は、“獠がわざともっこりしないようにして、香を好きな気持ちがバレないようにしている”と、2人の前でハッキリ言ってしまう。
このときの香は頬を赤らめており、珍しく乙女の顔を覗かせていた。対して獠は「恋人は作らない主義なんだがな〜〜」「いっそ香を口説いちまったほうがいいのかな……」と、驚きの発言をしている。
しかし、いざ香を前にするとガラにもなく緊張してしまう獠。口説き文句も用意できない獠は、いきなりキスをしてあとは成り行きに任せようと決意。
そして、キッチンで洗い物をしている香に後ろから抱き着いてキスをする……のだが、キスしたのは香の服を借りていた温子だった。そして後ろには、もの凄い殺気を放って立ち尽くす香の姿が……。
う〜ん、残念。あのまま香とキスしていたら、どうなっていたのだろうか。
■意外なシーンでの南からの告白…『タッチ』
あだち充氏の名作野球漫画『タッチ』。本作では、主人公・上杉達也と双子の弟の和也、幼なじみの浅倉南を入れた三角関係も見どころだった。
和也は1年生ながら明星学園高等部野球部のエースで、すでに地区でも有名選手。南のことが大好きで彼女を甲子園に連れて行くことを目標に野球に取り組んでいた。
対して達也は天才肌ながらいつも弟を立てていて、いつも損な役回りだ。和也が南を想う気持ちを理解しているので、一歩引いて2人を見守っている。肝心の南は2人とも好きなものの、和也への気持ちは達也に向ける感情とは少し違ったものだった。
コミックス5巻にて。ある時、勉強部屋で後ろから南を抱きしめる和也。しかし何もリアクションをしない南に半ば気持ちを察し、何事もなかったように部屋に戻ってしまう。そのあと達也に「南が好きなんだ」と告げ、アニキにも渡したくないと語った。
その夜遅くまでベランダで思いにふけっていたからか、次の日高熱を出してしまう南。学校で何気なく振る舞っていたが、これに唯一気づいたのが達也だった。南の額に手を当てそのまま保健室へ連れて行く。そばにいたのに南の異変に気付けなかった和也は、その場を立ち去っていった。
早退した南を達也が自宅の部屋まで送り届けた際、南は「好きだよ、タッちゃん……」とひとこと告げる。すると達也は南の額に手を当て「かなり重病だな…」と返すのだ。これは和也へのフォローだったのかはわからない……だが、その後よろけた南を達也が受け止め、抱きしめるシーンが静かに描かれていた。
本作では達也のボクシングデビュー戦後、南が達也にキスをするシーンも登場する。普通だったらこのまま結ばれる展開になるだろうが、そうはいかないのが『タッチ』だ。2人が結ばれるのは最終巻。まだまだ先の話となる。