■劇場版の謎と『SPEC』とのつながり
その後、スペシャルドラマとして放送された『ケイゾク/特別篇~死を契約する呪いの樹』では、死んだと思われた柴田が記憶喪失となりながらも復活する。真山のもとには朝倉からゲーム再開の予告状が届き、今度は斑目の指紋が朝倉と一致する。最後に柴田も記憶を取り戻し、映画『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』へと続く。
この映画は、とある孤島を舞台に、15年前の第七神竜丸沈没事件に関連する殺人事件と並行して、朝倉との因縁が描かれていくのだが、物語終盤では突如世界観が変わる。赤い霧とともに沙織や柴田の父といった死者が現れだすのだ。そして、柴田の前に現れた朝倉が「僕の使命は人の命を永遠のものに転化させることだ」と語りだす。
どうやら朝倉は、『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画のように、争いのない黄泉の国で人類を融合させたいということらしい。のちに本作のプロデューサーが庵野秀明さんに影響を受けたと語ってはいたが、当時この急展開には驚いた。だが木戸や壺坂をはじめとした死者は愛と憎しみは紙一重だと説き、朝倉を拒否して再び死を選んだ。
その後、朝倉は「なぜみんな仲良くできない! なぜひとつになれない!」と訴え、柴田の父(霊)と真山に「お前なんかと一つになれるか」と撃たれる。最後は真山の前に爆弾を巻いた朝倉が現れて爆発するが、真山の無事が描かれてエンドとなった。
これで今度こそ朝倉は死んだと思われたが、『SPEC〜結〜爻ノ篇』の最後、天の声が「行きましょう、朝倉」と発言し、朝倉が人智を超える存在であることが示唆された。久々に名前が出るのは嬉しい一方、突然の出来事に思わず「朝倉!?」と声をあげてしまったのは筆者だけではないはず。
さらに、ショックなのは、『SPEC〜零〜』で真山の殉職がさらっと明かされたことである。スペックホルダーとの戦いが原因らしいが、「朝倉絡み?」「実は生きてる?」といろいろ想像してしまう……。
結局のところ、「朝倉って何者?」に対する明確な答えは出ていない。判明しているのは、他人に乗り移れる、暗示をかけられるといった「SPEC」があるということだが、それすら確定ではない。今後、朝倉のすべてが明かされる日は来るのか、放送から25年がたった今も謎が深まるばかりだ。
ストーリーは難解な部分もあるが、真山と柴田をはじめとした個性豊かな登場人物にわくわくさせられる『ケイゾク』。ぜひ一度、その魅力を実際に観て味わっていただきたいものである。