中谷美紀&渡部篤郎に魅せられた…放送から25年!名作ドラマ『ケイゾク』が時代に刻んだ「型破りバディ」と「予想外展開」の画像
中谷美紀  写真/ふたまん+編集部

 1999年に放送された堤幸彦さんによる刑事ドラマ『ケイゾク』は、放送当時から他ドラマとは一味違う作風が大きな話題になった。後の『SPEC』や『SICK’S』の土台となったドラマでもある。

 ドラマから特別篇、映画と、作品世界が広がっていった本作。放送から25年たった現在でも、当時のインパクトが忘れられないというファンも多い。中には『SPEC』をきっかけに『ケイゾク』をさかのぼって観たという人もいるだろう。今回は、そんな『ケイゾク』の魅力を振り返ってみよう。

※以下、本編ラストまでのネタバレを含みます。未視聴の方、気になる方はご注意ください。

■個性的な登場人物たちに魅せられた『ケイゾク』 

 物語の舞台は“鋭意継続捜査中”の事件を扱う警視庁捜査一課弐係で、基本的に1話完結で描かれる。名刑事だった亡き父の後を追って警察官になり、弐係に研修配属された中谷美紀さん演じる高IQのキャリア・柴田純が、「あの~、犯人わかっちゃったんですけど」のセリフとともに次々と難事件を解決する。

 弐係の中でも特筆すべきなのが、渡部篤郎さん演じる真山徹だ。魅力を語ればキリがないほど、真山役の渡部さんはとにかく全てがカッコイイ。

 真山は、粗暴だが正義感があり、面倒くさがりながら面倒見がいい善の部分と、かつて妹・沙織を襲い自殺に追い込んだ犯人への憎しみから生まれた“ドス黒さ”が入り乱れる、危ういキャラである。そんな彼と、おっとりマイペースで常識外れな柴田は、まるで正反対。だが、この2人のシュールかつコミカルな掛け合いは、本作の見どころの一つとなった。人間不信の真山が柴田を信頼していく過程を見て、多くの視聴者が2人の虜になったはずだ。

 捜査一課一係所属ながら、ほぼ弐係の一員になっていた木戸彩役の鈴木紗理奈さん、のらりくらりしながらもここぞという場面で刑事魂を見せる係長・野々村光太郎役の竜雷太さん、真山の元教育係であり過激派に妻子を殺されながらも責務を全うした壺坂邦男役の泉谷しげるさんら他のキャストも、実に個性派ぞろいである。彼らがいたからこそ、真山と柴田が輝いたとも言えるだろう。

 オープニングでは、風景や事件などのスチール写真を繋げた映像に、坂本龍一さんが手掛けた中谷美紀さんの曲『クロニック・ラヴ』が流れる。不気味さを感じる映像と穏やかな曲調が不思議にマッチしていて惹き込まれてしまう、なんともスタイリッシュなオープニングだった。

■雰囲気を変えて怒涛のクライマックスへ!「朝倉」の正体は?

 コミカルとシリアスのバランスが絶妙な本作だが、中盤からガラッと雰囲気が変わるのも特徴のひとつである。

 その中心にいつもいるのが、「朝倉裕人」なる人物。8話で柴田の親友であり、朝倉の恋人の大沢麻衣子(西尾まりさん)が命を落としたのをきっかけに、柴田はその原因と思われる朝倉に関する調査を進める。一方の真山も、妹絡みで朝倉に強い憎しみを持ち、常に彼を監視していた。

 実は快楽殺人犯であった朝倉に翻弄されるように物語は動き、やがて真山は朝倉にハメられ、早乙女管理官(野口五郎さん)の命令を受けた特殊捜査班SWEEPに追われる身となってしまう。この辺りから真山の精神は壊れ始め、同時に我々視聴者の視点も曖昧になっていく……。同僚が朝倉に操られるなど、誰を信用すればいいのかわからなくなっていく展開も印象的だった。

 そして最終話「死の味のキス」にて、弐係は真山のために動き出すが、壺坂と木戸はSWEEPに撃たれて離脱。おまけに真山と対峙した朝倉は、“俺は朝倉じゃない”と言い残して自殺してしまう。つまり、それまで作中で「朝倉」とされていた人物さえも偽物だったのだ。

 その後、野々村が早乙女の指紋認証をしたところ、中学時代の朝倉のものと一致。つまり早乙女=朝倉だと判明する。一方、早乙女と対峙した真山もその正体に気づくが、本性をあらわした早乙女はSWEEPの斑目重友(村井克行さん)に真山射殺を命令する。

 真山をかばった柴田は早乙女に、真山はSWEEPに撃たれて倒れた。だが真山はプラスチック弾で撃たれただけだったため、油断した早乙女を射殺する。一方、実弾で撃たれた柴田は意識朦朧。真山に抱かれ、「私、死ぬ前に一度だけ、キスというものをしてみたいんですけど……ちょっと、してみてもらえますか?」と途切れ途切れの声で言うのだった。

 柴田の命が残りわずかなことを察した真山がその言葉に応え、彼女と「死の味のキス」を交わすクライマックスは実に美しい。……が、エンディングで早乙女の指紋が変わり、朝倉の生存が示唆される謎を残す最後となったのだった。

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