■女性同士の友情と恋愛をピュアに描いたドラマ『素顔のままで』

 『素顔のままで』は、1992年4月よりフジテレビ系列の月9枠で放送されたドラマだ。

 このドラマは、歌手の中森明菜さんと安田成美さんのW主演。中森さん演じるミュージカルスターを目指すカンナと、安田さん演じる司書の優美子は、ひょんなことから同居をする。

 優美子は学生時代に中絶した過去を持ち内向的な性格であったが、カンナとの出会いがきっかけで徐々に前向きになっていく。そんな2人の友情や成長、それぞれの恋愛を描いたドラマだ。

 カンナと優美子は正反対の性格ゆえ何かとぶつかっていくが、同じ男性を好きになる。このあたりの展開は90年代ドラマのあるあると言えそうだ。ちなみに2人から愛される一也役を演じたのは東幹久さん、カンナに片思いをする卓郎役は的場浩司さん、優美子の見合い相手の義彦を演じたのは鶴見辰吾さんだった。

 そして本作もまた、衝撃的な最終回を迎える。一也との子どもを身ごもった優美子は、心臓に病を抱えていた。しかし、命への危険をわかったうえで出産を決意し、結果、亡くなってしまう。カンナは、残された優美子の子ども・優奈の母親がわりとなるのだった――。

 最後はやや悲劇的なストーリーだが、女の友情が最後まで輝く展開に多くの人は感動したはず。近年ではあまりメディアに出ない中森さんの演技も見どころで、ややハスキーがかった声で優美子につっかかり、叫んだり号泣したりする姿が印象的だった。また、米米CLUBが歌った主題歌『君がいるだけで』も大ヒットし、シングルは驚異の289万枚を売り上げることとなった。

 

 90年代は“テレビドラマの黄金期”とも呼ばれており、たくさんの話題作が誕生した。今回紹介した3本のドラマもその時代を象徴する作品であり、無償の愛やHIV、友情と恋愛など重厚なテーマが多かった。

 しかし悲しいラストだからこそ、視聴者にとっては忘れられない思い出深い作品になったのだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3