『この世の果て』に『神様、もう少しだけ』、『素顔のままで』も…90年代の名作恋愛テレビドラマ「悲しすぎる最終回」の画像
深田恭子 写真/ふたまん+編集部

 まだスマホが普及していなかった1990年代。夜のほっとひと息する時間に、テレビドラマを楽しんでいた人も多かっただろう。

 90年代に人気だったドラマは、今では思わず「懐かしい!」と声を上げたくなるような俳優や歌手も出演していた。当時はバブルが崩壊したあとの時代背景もあってか、物悲しいラストを迎えるドラマも多かったように思う。

 今回は、そんな90年代に人気を博した話題の恋愛ドラマを振り返ってみたい。

■野島伸司史上最悪にダークなドラマ!? 『この世の果て』

 『この世の果て』は、1994年1月よりフジテレビ系列で放送された月9ドラマである。脚本は90年代のドラマ界を席巻した野島伸司さん。野島さんは『高校教師』や『人間・失格 ーたとえばぼくが死んだらー』といった話題性のあるドラマを手がけているが、本作は野島さんの脚本のなかでも“史上最悪なダークドラマ”と言われている。

 物語のあらすじはこうだ。主人公の鈴木保奈美さん演じる砂田まりあは、昼は郵便局、夜はホステスとして働き、桜井幸子さん演じる目の見えない妹・ななの手術費用を稼いでいた。

 そんなまりあは三上博史さん演じる天才ピアニストの高村士郎と出会う。まりあも士郎も人には話せないような暗い過去を持ちつつ恋に落ちるが、茨の道が待っているのであった。

 士郎は、ピアニストの道を断つために士郎が自ら手を傷つけたり、薬物に溺れたりと、なかなかハードな人物。しかし、まりあは、そんな士郎をひたすら献身的に愛する。

 そして最終回には、まりあは士郎の暴力によって、子どもを流産。彼の元を離れ、御曹司の征司と結婚を決意する。だが、結婚式当日、征司とヘリコプターで飛び立ったまりあは、地上に士郎の姿を発見。“ひとこと話したい”と、上空から飛び降りてしまうのだ。

 最終的には、士郎とまりあが共に過ごすシーンで終わるが、まりあは記憶喪失になっていたりと、正直ハッピーエンドとは言えない。しかし“無償の愛とは何か”を問う内容に、多くの視聴者が釘付けになった。

 主役の鈴木さんは、『東京ラブストーリー』で一世風靡した人気女優だ。本作では髪の毛をバッサリとショートにし、タバコを吸うなどサバサバした役柄が話題になった。また若き頃の大浦龍宇一さんや、まりあにひかれる御曹司役の豊川悦司さんもクールでカッコよかった。

 全体的に物悲しいドラマだが、脚本や出演者だけではなく、主題歌だった尾崎豊さんの『OH MY LITTLE GIRL』も印象的だった。物悲しいメロディは本作の雰囲気にマッチし、シングルの売上は100万枚を超える大ヒットとなった。

■HIVへの偏見に警鐘を鳴らしたドラマ『神様、もう少しだけ』

 『神様、もう少しだけ』は、1998年7月からフジテレビ系列で放送されたドラマである。当時社会問題になっていたエイズウイルス(HIV)をテーマにしたドラマで、話題性もあり視聴率は高かった。

 深田恭子さん演じる主人公・叶野真生は、金城武さん演じる人気音楽プロデューサー・石川啓吾のライブチケットが欲しい一心で援助交際をしてしまう。

 その後、真生は啓吾と知り合い愛し合う仲に発展するのだが、そのとき真生の体はHIVに感染していた。エイズ発症への恐怖を抱えつつ、二人が向かう愛の行方はどうなるか……という物語だ。

 90年代当時、エイズは“不治の病”だと恐れられていた。91年にQUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーさんがHIV感染で死去したことも大きなニュースとなったが、感染した人への過剰な差別も問題になっていた。

 『神様、もう少しだけ』はそのような社会に警鐘を鳴らすべく、HIVに対して正しい知識も発信したドラマだ。ドラマでは真生の援助交際やいじめ被害、自殺未遂など重い展開が続く。最終回、真生は啓吾と永遠の愛を誓い、病と闘う身でありながら、命をかけて愛娘を出産。しかし、結婚式の当日、真生は倒れ、帰らぬ人となってしまう……。

 そんな衝撃的な結末でも、病気を受け入れて一生懸命生きる真生の姿に、この病気への考え方をあらためた人も多かっただろう。

 このドラマで印象的だったのが、真生と啓吾の長いキスシーンだ。ゆっくりと唇を重ねるシーンには、制作陣からの“HIVはキスでは感染しない”というメッセージが込められていたという。

 この難しい役柄に臨んだ深田さんは、当時なんとまだ15歳。ミステリアスなアジアのスター・金城さんとの共演もマッチし、最終回の視聴率は28%以上に及んだ。

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