小説や漫画作品のキャラクターは、メディアミックスの際に設定が変更されてしまうものも珍しくはない。なかには、原作とはかけ離れた思い切った“テコ入れ”でファンを驚かせたキャラも登場している。今回は、本家から大きくモデルチェンジしたキャラたちについて見ていこう。
■クールビューティーに生まれ変わった鬼太郎のパートナー『ゲゲゲの鬼太郎』ねこ娘
時代を経てなお、その絶大な人気で新たなアニメや映画が公開され続けているホラー漫画作品といえば、巨匠・水木しげるさんの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』だろう。
1954年に紙芝居から始まった本シリーズは、時代ごとに異なった設定や世界観で新たなアニメが展開されており、2020年までで計6シリーズが放送されている。
新シリーズが始まるたび、主人公・鬼太郎をはじめとしたお馴染みの妖怪たちがどのように描かれるのかが注目されるなか、アニメ第6期にて大胆なモデルチェンジで話題を呼んだのが、鬼太郎のガールフレンド兼パートナーのねこ娘である。
アニメ放送のたび、その時代ごとの“可愛い”要素を盛り込まれビジュアルが変化してきたねこ娘。初期はおかっぱの少女であったが、リボンを結わえたり、髪色を染めたりと、徐々に変化をみせるようになった。
ところが、アニメ第6期はこれまでとはまったく異なり、なんと高身長なモデル体型の美女として描かれたのだ。赤を基調としたファッションにリボンや衣装など歴代のねこ娘像を受け継いでいるものの、シリーズ初となるスタイリッシュな振る舞いで、公開当初、多くの視聴者の度肝を抜くこととなった。
性格も歴代のねこ娘に比べてクールな一面が目立つようになり、いまやファンからは作中登場する“ねこ姉さん”の愛称で親しまれる存在となっている。
原作が長い歴史を持つ作品であるがゆえ、今回の大幅なモデルチェンジは制作陣としてもかなり思い切った選択だったようだが、結果的にその改変が多くの視聴者に受け入れられ、新たなファン層を獲得することにもつながった。
制作陣のチャレンジ精神溢れる、なんとも大胆かつ思い切ったデザイン変更である。
■より若く飄々とした姿で描かれる“無責任男”『無責任艦長タイラー』ジャスティ・ウエキ・タイラー
小説原作からアニメ化されるにあたり、キャラクターの設定や容姿に大幅なモデルチェンジが加わるケースは多い。なかでも吉岡平さんが手掛けたライトノベル『無責任艦長タイラー』は、非常に大胆な改変が行われた作品の一つだろう。
長きにわたり物語が続くスペースオペラ『宇宙一の無責任男』シリーズは、楽天家かつお気楽な性格をした“無責任男”、ジャスティ・ウエキ・タイラーを主人公に、彼の一族の活躍を痛快なギャグやパロディを交えながら描いた作品だ。
1993年から放送された同タイトルのアニメでは、原作とは世界観やキャラクター設定を別物としたオリジナルな展開が繰り広げられており、主人公のタイラーにも、大幅な改変が加えられている。
原作では“髪型をオールバックにした中年男”というイメージなのだが、アニメ版ではより若々しさが強調された“イケメン風の青年”として描かれることとなった。
作中で艦長の座についてからは赤い軍服にコートを羽織る独自のスタイルを見せるようになり、「ジャスティ・ウエキ・タイラー、二十歳(はたち)!!」といった特徴的な口上を述べたり、小道具に扇子を愛用したりと、原作とは異なるさまざまな要素が盛りだくさんのキャラクターとなっている。
原作での“強運の持ち主”という設定はそのままに、おだて上手でお調子者の性格がアニメ版では強調され描かれることとなった。
そのほか、アニメ版では多くの登場人物たちにも大胆なモデルチェンジがされており、キャラ同士の関係性も改変されている部分は多い。
総じて原作とは異なった、アニメオリジナルの世界観と捉えるのが妥当だろう。独自の世界観で描かれるタイラーの奇妙な“出世劇”は、原作とは一風違った躍動感で観る者をとりこにしている。