■性別が変わっても領主としての手腕は衰えず…『銀河英雄伝説』アドリアン・ルビンスキー
数多くの人気SF小説が登場するなか、いまもなお絶大な人気を誇っている作品といえば、1982年から刊行された田中芳樹さんの代表作『銀河英雄伝説』だろう。
本作は人類が太陽系外に進出した遠い未来を舞台に、国家間で行われる戦争と、そこに現れた二人の“英雄”の活躍を描いた大長編作品だ。
その絶大な人気から数々のメディア展開を続けているのだが、なかでも漫画版ではとあるキャラクターが思いもよらぬモデルチェンジを披露することとなった。
それが「フェザーン自治領」の第五代領主として登場する、アドリアン・ルビンスキーだ。
ルビンスキーは多くの愛人を持つ中年男性だが、冷徹冷酷な謀略家としての一面も併せ持っており、帝国の支配下にあるフェザーンに独自の政治路線を形成するなど、確かな手腕を秘めた人物だ。
原作では“ダンディな中年男性”として描かれた彼だが、漫画によってはスキンヘッドはそのままに、より若々しい男性として描かれる場面も見られる。
なかでも大幅な改変で読者を驚かせたのが、道原かつみさんによる漫画版だろう。なんと名前が「アドリアーナ・ルビンスカヤ」となっただけでなく、性別が女性へと変更されたのだ。
大胆なモデルチェンジではあるものの、トレードマークであるスキンヘッドや凄腕の領主という設定はそのままに、どこかミステリアスな魅力に満ちた“新解釈”の姿が描かれた。
原作の良さを見事に引き継いだ良改変っぷりに、思わずファンもうならされてしまったことだろう。
メディア展開に伴いキャラの設定に手が加えられることは珍しくはないが、ときにはまるで別物というレベルの改変が施され、ファンが驚くケースも少なくはない。漫画やアニメで描かれる新たなビジュアルと原作との改変点に着目してみるのも面白いかもしれない。