■若者VS大人の最後の演説シーンは賛否両論も

 ストーリーに目を向ければ、『未成年』は差別をはじめとした生きづらい世の中で、一生懸命生きようとする若者の姿を描いている。

 たとえばチンピラの五郎はときに悪を成敗するために奔走するが、その見た目や過去の言動からなかなか大人に理解してもらえず、前に進めない。また知的なハンディを持つデクも周囲からイジメられ、最後は強盗傷害事件を起こしてしまう。デクを守るためにはこの社会から逃亡するしかないと考えた博人たち若者は、最終的に廃校で逃亡生活を送るのである。

 その後、警察に捕まった博人だが、再び逃走し高校の屋上にたどり着く。下には生徒やテレビクルーも集まって騒ぎとなっていた。そこで博人は大人たちに向け、差別されることの悲しさや真剣に生きる意義などを語るのだ。

 当時見ていた筆者はとてもカッコ良いシーンだと思いつつ、現実ではすぐに警察に取り押さえられちゃうよなあ……とも思っていた。いしださんが屋上から主張するこのシーンはとてもインパクトがあったが、賛否両論を呼んだシーンでもあった。

 ちなみにこの印象的なシーンは1997年から始まるTBSの人気バラエティ番組『学校へ行こう!』で演出がマネされ、大人気コーナー「未成年の主張」が誕生したのである。

 

 『未成年』は人気俳優の出演が話題を呼び、若者たちの荒く輝かしい青春を描いた作品だ。野島さんが手がけた作品のなかでは貴重な青春ドラマだが、ハンディを抱えたデクがいじめられるシーンや、恋人を庇って刺され死去する女性が登場するなど、やはり野島さんらしいダークなシーンも見られる。

 近年、この作品が再放送される機会はないが、DVDでの視聴は可能なので、気になる人はぜひ手に取ってみてほしい。

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