■150本のソフトをイッキ買い! 海外コレクターの懐事情

 その額、なんと66000円! というか、ゲームボーイカラーは198000円!? これらはもちろんどれも中古品。この価格からもレトロゲーム人気がわかります。ただ、岡嶋さんによれば、中古ソフトの価格上昇は、インバウンドの影響よりも、国内のレトロゲーム人気の過熱によるところが大きいのだとか。実際、外国人観光客のいないコロナ禍の期間から価格は上がりはじめていたようです。

 ちなみに、66000円の値段が付けられているのは、2016年に発売された『ニンテンドー2DS ポケットモンスター限定パック』。ニンテンドー2DS本体にソフトとおまけが付いている商品ですが、当時の販売価格は9980円なので6倍以上の値段に! ゲームボーイカラーのほうは『ポケットモンスター金・銀 記念バージョン』で、こちらは約26倍もの価格に跳ね上がっています。

ゲームボーイ版の元祖『ポケモン』。ソフトだけでも当時の定価超えの価格で販売されている。(ハードオフ吉祥寺店にて撮影)

「ゲームソフトでいえば、『スーパーマリオ』も非常に人気があります。海外版と日本版ではパッケージも違うので、日本のものが欲しいというお客様が多いんです。『ポケモン』もそうなんですが、今では昔のソフトも現行機で遊べるようになっていますよね。それでも、わざわざ店頭に来てソフトを購入されるわけです。だから、コレクションという側面が大きいのではないかと思いますね」

 だからこそ、古いゲームハードのタイトルのほうが需要がある、ということのようです。ちなみに海外の皆さんは、どれくらい買っていかれるんですか?

「全体的には、だいたい1人あたり1~5万円ほどのお買い物をされていきますね。中には1回の来店でゲームソフト150本を購入した方もいました。ただし、“買い占め”という印象はなくて、欲しいものがたくさんある、という感じです。お店に来て、いいものがあったらとにかく買って帰る……という意識のようですね。円安に加えて旅行先ということで、財布の紐もだいぶ緩んでいるのではないでしょうか(笑)」

 どうやら、「資産」としてレトロゲームを買い占めていくようなインバウンドはおらず、ゲームファンがコレクション目的でたくさん買っていく、という状況のよう。

「海外のお客様を見ていると、高く売れるかスマホで調べている……みたいな感じじゃないんですよ。我々が子どもだった時のようなキラキラした目で商品を見ています(笑)。もっと純粋な気持ちで“あれも欲しい、これも欲しい”と購入されている印象ですね」

 ゲーム以外であれば、オタクカルチャーとして根強い人気を誇る『週刊少年ジャンプ』作品の関連商品(『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』など)が人気だとか。フィギュア、カプセルトイ、クリアファイルといったアニメグッズがよく売れているとのこと。

「一方で、『プレイステーション』をはじめとするソニー系の商品などは、今はまだ需要が落ち着いています。海外顧客にとっては、マリオ、ポケモン、ゼルダといった任天堂ブランドのレトロゲームが、日本の象徴という認識があるようですね」

 日本に観光に来て、「日本文化」をおみやげに買う――。その代表格がいまや「レトロゲーム」になったということなのかもしれません。

■プロフィール
株式会社ハードオフコーポレーション 執行役員
岡嶋雄一さん
直営店舗運営部部長。中古品の買取・販売店として、日本全国・海外に900を超える店舗を構えるハードオフグループの直営店を管轄。

  1. 1
  2. 2
  3. 3