コナミの人気ゲーム『実況パワフルプロ野球』シリーズは、2024年の今年、30周年を迎えた。野球ゲームの定番となって久しい「パワプロ」だが、そのスピンオフシリーズ『パワプロクンポケット』はご存じだろうか。
「野球バラエティ」を名乗る本作は、野球をテーマにしつつ、その裏で展開するSFファンタジーとして人気を博した。キャラクターの死や裏切りが当たり前のハードな作風から、ネット上では「みんなのトラウマ」と話題になることも多いゲームである。
今回は「パワポケ」シリーズをよく遊んでいた筆者が、この先一生忘れられないだろうトラウマエピソードを語っていく。プレイしていた人は思い出しながら、遊んだことのない人は「野球ゲームだよね?」と首を傾げながら読んでほしい。
■『パワポケ7』子どもの落書きみたいな絵が怖すぎる「し あ わ せ」
最初に紹介したいのが、『パワプロクンポケット7』表サクセスのバッドエンド、通称「し あ わ せ」だ。『パワポケ7』は花丸高校野球部に突如現れた謎の存在・ヒーローを中心とした物語である。
弱小野球部がヒーローの力でどんどん勝ち上がっていくのだが、肝心の主人公ら野球部員はヒーローに頼りっぱなしに。
終盤で「ヒーローに頼らずがんばろう!」と奮起した主人公は、ヒーローと野球部をかけた試合をおこなう。しかしこの試合に負けると主人公たちは洗脳され、自分で何も考えなくてもいい体にされるバッドエンドを迎えてしまうのだ……。
「・・・ワーイ ワーイ♪・・・野球ガ デキテ タノシイナ~♪・・・」
……と、明らかに正気を失ったセリフ、クレヨンで書き殴ったような絵で描かれた主人公たち、そして大きく表示される「し あ わ せ」の4文字。ホラーゲームさながらの恐怖演出に、当時の子どもたちは震えあがった。
筆者が体験した時は、敗北の悔しさと「どうなるんだこれ?」という困惑からゲーム画面をじっと見つめていた。かぶりつくように間近で眺めていたら画面が暗転し、上の画面が表示されたわけだ。
あまりの恐ろしさにゲーム機を枕に投げてしまったことを今でも覚えている……。
■『パワポケ9』アンドロイドの哀しき末路……広川武美のバッドエンド
次は『パワプロクンポケット9』に登場する彼女キャラ、広川武美のバッドエンドだ。
巨大企業「オオガミ」が破壊工作のために作り出したアンドロイドである彼女は、オオガミから脱走して平穏に暮らしていた。だが体内に仕掛けられた時限自爆装置により、あと数カ月の命という時期に主人公と出会う……このぶっとんだ設定こそ「パワポケ」の醍醐味だ。
武美と仲良くなると彼女の自爆装置を解除するイベントが発生するのだが、これが難しい! わずか数秒だけ表示される選択肢から正しいものを選ぶ必要があり、失敗するとやり直しが利かない。
筆者は初プレイで間違えてしまった。その先に待っていたのは、彼女が山奥で人知れず爆発するバッドエンドだ。
「くやしいなぁ、くやしいなぁ。」「泣けないなんて・・・・・・・・・・くやしいよぉ・・・。」
アンドロイドゆえに涙すら流せない武美の哀しさが胸にくる。看取ろうとした主人公を「あなたにだけは見られたくない」と拒絶し、彼女がひとりで最期の時を迎えてしまう結末は今でも忘れられない。
プレイヤーのミスで生死が左右されるのが、この武美というヒロインだ。バッドエンドを迎えて申し訳なさで胸がいっぱいになったプレイヤーは、筆者だけではないはずだ。