1992年にスーパーファミコン用ソフトとして発売された『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』。壮大なストーリーが描かれる同作において、青年編の途中で起こる「花嫁選び」のイベントは今も頭を抱える難題のひとつ。
幼年期に出会い、ともにお化け退治の冒険に出かけたこともある「ビアンカ」と、富豪・ルドマンの娘である「フローラ」と2人のうちのどちらかを相手に選ばなければならず、選択次第でそのあとの戦闘時の能力や、生まれる子どもたちの容姿に変化が訪れる。馴染みの深いビアンカか、自分を慕うお嬢様のフローラかは、悩み深い問題で「どちら派か?」はスーファミ版の発売以降もファンの間でたびたび話題となってきた。
そんな中、2008年に発売されたニンテンドーDS版『ドラクエ5』で、第3の花嫁候補として「デボラ」が登場した。彼女は髪の毛が盛り盛りで、ピンクのミニスカワンピースを着用。高飛車でトゲのある性格と派手な容姿が特徴的なキャラだ。
一見すると「悪女」のような、オリジナル版の2人とは全く違うタイプの「天空の花嫁」のため、多くのプレイヤーは選択肢にも入れていなかったかもしれない。だがはたして安易に結婚相手の候補から外して良かったのか、改めて「デボラ」の魅力を振り返りたい。
■容姿は派手、性格はドぎつい「デボラとは?」
デボラは、ルドマンのもう一人の娘であり、フローラの実の姉にあたるキャラ。フローラが温厚温和な性格で言葉遣いも丁寧であるのに対し、デボラは徹底的に「高飛車」かつ「不遜」であり、そのキツい性格は初登場から明らか。主人公に対して「あんたって よく見ると 小魚みたいな 顔してるのね」と言い放つなど、その難ある性格は伝わる。
そんなデボラは、冒険の中での嫁選び当日に突然の乱入という形で始まる。「しかたないから私があんたと結婚してあげるわ。いいわね?」と、強引に花嫁候補に名乗りを上げるのだ。
地元サラボナの住民たちも、デボラに対して散々な評価を与えており、いざ彼女と結婚しようとすると、父であるルドマンでさえも、「な なんと デボラを選ぶとは本気かね?」「ぬぬ~〜 なんという勇気のある男よ!」と驚くほど。長女・デボラをいかに心配していたか、大富豪としての姿しか知らなかったスーファミ時代のプレイヤーにとっては、ルドマンの意外な苦労を知ることになる。
では、実際にデボラを花嫁にするとどうなるのか? その後のストーリーで、彼女の本当の魅力や意外な一面が明らかになる。
■実はツンデレ「デボラとの結婚生活」
結婚したら変わるかも……という淡い幻想を打ち砕くように、その毒舌ぶりは変わらない。DS版やスマホ版では、仲間との会話が楽しめるシステムが用意されており、冒険の中で彼女からの辛辣なコメントをいろいろと聞くことができる。特に主人公に対して「しもべ」と呼びかけることが多く、キツイ性格が浮き彫りに。
しかし、デボラの本質はただの毒舌キャラではなく、実はツンデレキャラとしての一面も持っている。「間違っても あんたがいなくてさびしいとか そういう理由でついていくわけじゃないから」と、彼女の照れ隠しのような心情が垣間見えるのだ。
また、結婚直後にレヌール城に連れて行くと、デボラのツンデレぶりはさらに明確に。「わ 私が そんな話を聞いたくらいで 怖がるなんて思ったら 大まちがいよ!」というベタなツンデレセリフも飛び出す。
さらに、クライマックスであるラスボス戦前には、「あんたが 物好きで 良かった。ふつうなら 私を 妻になんかしないわ。あの時 選んでくれて本当にありがとう。」と、デボラの感謝と愛情が語られる。プレイヤーにとっても感動的な瞬間に違いない。普段の厳しい態度からは想像できないような、心からの感謝の言葉はデボラというキャラの新たな魅力を見せてくれる。