■村人のために身を削った名もない神父への仕打ち「黄金の女神像」

 重たいドラマが多い『ドラクエ7』では、「黄金の女神像」というアイテムにまつわる神父のストーリーが胸に来る。この黄金の女神像は主人公たちが手に入れるアイテムではなく、村人に慕われる名もなき神父にまつわるエピソードとして存在していた。

 かつてレブレサックの村は、魔物が作り出した霧によって封印されていた。村から神父を含めた4人が調査に赴くも、誰も帰ってこない。ほどなくおとなしい魔物が村にやってきて住み着くようになるのだが……実はこの魔物は調査に行った神父だった。

 魔物が救う岩山にて、神父はボスキャラの「ボトク」によって姿の入れ替えを提案されていた。そうすれば村へは手出しをしないと言われ、神父は村のために魔物の姿になることを受け入れていたのだった。

 しかし、そんな経緯を知らない村人たちは、行方がわからなくなった人や霧の原因が村に住み着いた魔物(実は神父)のせいだと思い込み結託。彼を暴行して磔にし、火あぶりの刑に処しようとする。とんでもない誤解だが、魔物に姿を変えられている神父は話すことができない。

 その後、主人公たちがボトクを倒すと、時間差で神父は自分の姿を取り戻す。誤解とはいえ、自分を慕っている村人たちが今後も自分の姿を見れば苦しむだろうと考えた神父は、村を去って行くこととなる。

 ここで村で唯一魔物の姿の神父を理解しようとしていた少年・ルカスにより、旅の無事を祈って譲られたのが「黄金の女神像」だ。これはルカスの母親の家系が、代々受け継いできたものだという。

 う〜ん。今考えてみても、何も出ていく必要はないような気がしてしまう。現代に戻ると、自分たちにいいように筋書きが変えられてもいた。名もなき神父とはいえ、非常に切ないストーリーでなんともやりきれない気持ちになってしまった。

■自らを犠牲にして主人公たちを守った神父に絶句…「黄金の女神像」のその後

 その後、プロビナの村に登場する「黄金の女神像」。村の裏にある山の頂上の教会に祀られており、魔物からの侵略を防ぐ不思議な効果があるという。

 ここで登場する神父は記憶をなくしていた。筆者も含めて「あのときの神父だ!」と思ったプレイヤーは多かったことだろう。

 さて、隣国の軍事国家・ラグラーズがこの黄金の女神像を引き渡せと言ってくるのだが、これは変装した魔物の作戦だった。村の長老の息子・ラズエルは、黄金の女神像があると争いが起きてしまうと誤解し、黄金の女神像を破壊。そのせいで魔物がプロビナに攻めてくる。

 このとき、記憶を取り戻した神父はラズエルと主人公たちを隠し部屋に留め、自らを犠牲にして魔物に立ち向かっていく。

 何ともやりきれない展開で、もはや主人公たちが戦闘に加わったほうが村は平和だったような気もするのだが……しかし、実はそうはいかない。村を襲った魔物のボス「りゅうき兵」はラスボスよりも強い設定で、通常は勝てないのだ。

 最終的に破壊された黄金の女神像を教会横にある聖なる泉に浸すことで、りゅうき兵を弱体化させることに成功するのだが……それにしても不運すぎる運命を辿る神父が何とも可哀想だった。

 

 思い返してみると『ドラクエ5』の主人公も、『ドラクエ7』の名もなき神父も、かなり不運な数奇な運命だった。

 いや、数千年も鏡のなかに閉じ込められてしまったイリカも、かなり苦痛だったことだろう……。ドラクエの登場人物はみんな大変な人生を送っているといえる。

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