■けなされることまで先読みした監督の狡猾さ?『たけしの挑戦状』

 いまでこそゲームはセーブデータを用いて前回までのプレイ状態を再現できるのが当たり前になっているが、ファミコン時代は特定の「パスワード」を入力する方式も珍しくはなかった。

 このパスワードに裏技を仕込んだ作品も少なくはないのだが、あまりにも意外な効果の裏技が仕込まれていた一作といえば、1986年にタイトーから発売された『たけしの挑戦状』だろう。

 本作は、俳優や監督としても活躍しているビートたけしさんが監修したファミコンゲーム。凄まじい自由度を誇る一方、もはや“理不尽”とすらいえる高難易度な謎解きの数々が有名だ。そのあまりにも前衛的すぎる作りから、いまだに“伝説の一作”として語り継がれている。

 そんな本作においても、あらかじめ工程を知っていなければ到底再現できない数々の“裏技”が存在するのだが、今回紹介したいのがゲームコンティニュー時のパスワードだ。

 通常、パスワードにはゲーム上で発行された不規則な文字列を入力する必要があるのだが、ここで「たけしのあほ」という一言を入力すると、なんと即ゲームオーバーになってしまうのだ。

 監修したビートたけしさんが自身をけなされることを想定し仕込んだのかはわからないが、パスワード入力後に主人公の葬式シーンに直行するのは、なんともシュール極まりない展開だろう。

 もちろん、ゲームオーバーになってしまうためパスワードとしてはなんの効力もないが、まず通常のプレイでは気付くことのできない意表を突いた“裏技”である。

 

 ファミコン作品の“裏技”はどれも便利な効果のものばかりだが、一方で今回紹介したような制作者の“遊び心”を感じられるものも多く存在している。ひとたびやり方が分かると、ついつい試してみたくなってしまうのも、古き良き“裏技”の魅力なのかもしれない。

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