■ブラック・ジャックの過去が明かされる5作目の実写化ドラマ

 5作目の実写化となったのは、2011年に日本テレビ系で放送されたスペシャルドラマだった。正式タイトルは『ヤング ブラック・ジャック』で、その名の通りブラック・ジャックの若かりし頃を描いた、いわば『ブラック・ジャック』の前日譚的な作品だ。

 ただ、前日譚とは言ってもそもそもの設定に違う部分が多く、基本的にはオリジナルストーリーとなっている。間時生(間黒男)を演じたのは岡田将生さんで、医学生であり闇医者だった彼がブラック・ジャックになるまでの様子が描かれる。

 厳密にいえば、本作にはドクター・キリコは登場しない。代わりに、後にキリコとなることが示唆される東慶大学病院の医師・桐生直樹という人物が登場する。演じていたのは、小澤征悦さん。桐生はエリート医師で、軍医でなければ銀色の長髪でもなく、眼帯もしていない。つまりほぼ別キャラだ。

 安楽死への考えもフォーカスされておらず、エリート医師らしく間時生の行動に批判をぶつける立ち位置になっていた。だが、小澤さんのパリッとしたスーツ姿は決まっているし、別キャラの視点から見れば素晴らしいキャスティングなのではないだろうか。

 間時生にプライドを折られた桐生は、ラストで東慶大学病院を去り、空港のベンチで子どもが忘れていったアルファベットブロックをおもむろにいじり出す。そして「KIRYU NAOKI」から婚約者の名前「YUNA」を抜き取り、残った「KIROKI」を入れ替えて「KIRIKO」を作ってにやりと笑うのだった。 

 過去に3度実写版で登場してきたドクター・キリコだが、改めて振り返るとそれぞれ作品ごとの個性がある。6月30日のドラマでは、初の女性ということでまた違った一面が見れることだろう。どんな背景を持ち、ブラック・ジャックとどう関わっていくのか、物語の内容が気になるところだ。

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