1973年から『週刊少年チャンピオン』で連載が始まった、手塚治虫さんによる医療漫画の金字塔『ブラック・ジャック』。これまで複数回にわたって実写化されてきた同作だが、2024年6月30日に24年ぶり6作目となる実写ドラマがテレビ朝日系で放送される。
主人公のブラック・ジャック役に高橋一生さん、助手のピノコ役に永尾柚乃さん、その他役名を明かされていない豪華キャストが名を連ねる中、SNSを中心に特に注目を集めているのが石橋静河さんが演じる、女性キャラとなったドクター・キリコだ(同ドラマでは「医師・キリコ」)。
ドクター・キリコといえば、軍医時代の経験から安楽死を必要な処置の一つと考え、生かせるものは助けるが見込みのない者には安楽死の選択を与える男性医者。「金しだいで命を助ける」ブラック・ジャックこと間黒男のライバルとしてたびたび登場する人物でもある。
今回のドラマ『ブラック・ジャック』では、顔面が恐ろしく変形する奇病「獅子面病」に苦しむ女性・六実えみ子(松本まりかさん)がキリコを訪ねる展開があるという。原作とは違い女性が演じるキリコが作品でどう活躍するのか、石橋さんの演技は大きな話題を集めそうだ。
一方、過去に実写化された『ブラック・ジャック』では、ドクター・キリコはどのように描かれてきたのだろうか。今回は、6月30日の新ドラマ放送に際し、これまでにドクター・キリコを演じた俳優たちを振り返ってみよう。
■ドクター・キリコを初めて演じたのは草刈正雄さん
実写版『ブラック・ジャック』の初代作は、宍戸錠さんがブラック・ジャックを演じた1977年公開の大林宣彦監督による映画『瞳の中の訪問者』だ。2作目は1981年に放送された初の連続ドラマで、『加山雄三のブラック・ジャック』というタイトル通り加山雄三さんが主演を務めている。どちらも原作をベースにしたストーリーとなっているが、この2作品にはドクター・キリコは登場しない。
キリコの登場は1996年に制作された隆大介さん主演のVHS版からで、全3作あるうちの3作目『ブラック・ジャック3 〜ふたりの黒い医者〜』で初お目見えした。
本作は原作に比較的忠実で、『ブラック・ジャック』実写化の最高峰というファンがいるほど評価の高い作品。エピソードはタイトル同様原作の「ふたりの黒い医者」に沿った内容となっているが、DVD化はされておらず、現在ではレアな実写版となっている。
記念すべき初ドクター・キリコを演じたのは草刈正雄さん。銀色の長髪、眼帯というキリコのルックスをそのまま落とし込んでおり、再現度は非常に高い。
草刈さんのミステリアスで妖艶な雰囲気、渋い声が原作のドクター・キリコのイメージにぴったりで、見事にハマったキャスティングとの声も多い。ブラック・ジャックを演じた隆さんは当時39歳、草刈さんは43歳ということで、年齢の近い二人が渋いライバル関係を演じた貴重な実写化作品とも言えるだろう。
■次なる実写化ドラマは堤幸彦監督3連弾
2000年には、4作目となる実写化ドラマが本木雅弘さんをブラック・ジャック役として制作される。本作は1995年に『金田一少年の事件簿』を手がけ、1999年の『ケイゾク』、2000年の『池袋ウエストゲートパーク』と大ヒットを飛ばした堤幸彦監督によるもので、3度にわたってスペシャルドラマとして放送された。
1作目は完全オリジナルストーリーだが、2作目以降は原作をベースにしたストーリー。ピノコが双子など、キャラの設定や性格なども原作と違っているが、物語が面白いうえにテンポも良く、新たな『ブラック・ジャック』を体感できる作品となっている。
ドクター・キリコが登場したのは2001年9月に放送された『ブラック・ジャックIII 悲劇の天才料理人』。ストーリーは、原作エピソードの「ふたりの黒い医者」「弁があった!」の要素を取り入れた内容で、満を持して登場となったキリコを演じたのは森本レオさん。銀色、長髪、眼帯とミステリアスな雰囲気漂うキリコだが、当時の森本さんは58歳で本木さんは35歳。やや年齢差が大きいものの、声の存在感はたっぷりで、キリコの不気味な存在感が強調されていたのではないだろうか。
また、前述の通り本作はそれぞれのキャラの設定に違いがあり、安楽死を請け負う医師というキリコの個性はあまり強調されていない。フラッと現れてはブラック・ジャックを煽る場面が多く、どちらかというとライバル的存在としてフォーカスされている。