■キレイめギャルが登場していた『下弦の月』

 矢沢あいさんが1998年に発表した『下弦の月』は、これまでの作品からガラっと雰囲気が変わり、美月とアダムの切ない運命の恋を描くシリアスな恋愛物語だ。コミックス3巻と短いながら、設定が細部まで練り込まれていてボリュームも満点。大人になって読むと改めて物語の美しさに気づく名作だろう。

 主人公は、複雑な家庭問題を抱える女子高生・望月美月。ストレートのロングヘアが印象的な美女だが、彼女もまたコギャル風な出で立ちで、当時の“女子高生あるある”な制服の着こなしをしていた。

 コギャルの着こなしといえば、バーバリーのチェック柄マフラー+ルーズソックス+ミニスカ+ラルフローレンのカーディガン。美月もやはりチェック柄のマフラーにワンポイントの入った大きめカーディガン、そしてルーズソックスである。

 ルーズソックスはリバイバルが盛んで街中でも見かけるが、平成と令和では履き方に違いがあるように思う。

 当時は100センチ以上の長さのものをふくらはぎの真ん中でとめ、地面に引きずるくらい大きなダボダボを作っていた。ソックタッチの代わりにのりで止める子、寒い時期にタイツのようにして履く子なんかもいて思い出深い。現在は丈自体が短く、ふくらはぎ下部あたりをクシュっとさせるくらいのものが主流である。

■“姫ギャル”をテーマにした『姫ギャルパラダイス』

 最後は時代が少し進み、2009年から『ちゃお』で連載された和央明さんの漫画『姫ギャルパラダイス』を見ていきたい。

「姫ギャル」は、従来のギャルがど派手な姫系に変化した2000年初期に誕生したスタイル。服にはフリル・リボン・レース・ピンクといった女の子らしいアイテムを使い、ヘアスタイルは強めのパーマや盛りヘアで華やかになっている。 

 『姫ギャルパラダイス』は、平凡な女子高生・立川姫子が転入生の女装家・美神とちおとめと出会い姫ギャルに目覚めていく物語で、登場するヘアスタイルがとにかく突き抜けていた。

 たとえば髪の毛でクリスマスツリーを作る「盛り〜クリスマス」や、頭におせち料理を乗せた「特大伊勢海老おせち盛りアップ」など、奇抜盛りが登場するたびに、読者は度肝を抜かれたものである。

 ただ、ここまで奇抜ではないが、現実の姫ギャルの頭もなかなかに攻めていたのは事実。トップをやりすぎなくらいに高くしたりエクステでボリュームを出した強めカールをアップにまとめたりと、ビッグヘアの女子が多かった。

 ド派手で自由だったコギャルたち。ジャラジャラつけた携帯ストラップ、白いアイライナー、被り率100%のラブボートの鏡、持ち物のどこかに必ずついていたハイビスカスなど、今思えば不思議なアイテムも多いが、みんなで流行りに乗るのが楽しい時代であった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3