1974年5月から白泉社が発行する少女漫画雑誌『花とゆめ』が2024年5月、創刊50周年を迎える。これを記念し、東京シティビューでは5月24日から6月30日まで、「創刊50周年記念 花とゆめ展」が開催される。
同イベントでは、同誌に掲載された作品の原画やふろくなどの展示、体験コーナーやフォトスポットなども企画される予定で、『花とゆめ』のオンリーワンの世界観が体感できるようだ。
さて、多くの名作漫画を生み出してきた『花とゆめ』には、美内すずえさんによる『ガラスの仮面』や魔夜峰央さんの『パタリロ!』、佐々木倫子さんによる『動物のお医者さん』や羅川真里茂さんの『赤ちゃんと僕』のように、長期連載作が多い。ヒューマンものやファンタジー、夢を追う主人公の姿を描く作品などが多いのが印象的だ。
一方で、90年代ごろからは恋愛がテーマとなる作品も多く生まれ、ドラマやアニメへとメディアミックス化される作品も増え、人気を集めた。
今回は、「花とゆめ展」に備えて、つい懐かしい気持ちになる、メディアミックスされた1990年代から2000年代の『花とゆめ』の名作恋愛漫画を振り返りたい。
■癒しの雰囲気に漂うダークな背景
その代表格ともいえるのは、2001年に初めてアニメ化された高屋奈月さん原作の『フルーツバスケット』だろう。
1998年から2006年まで連載され、長らく同誌の看板作品であった『フルバ』。あらすじは、唯一の家族だった母親を事故で亡くした主人公・本田透が、十二支の不思議な呪いにかけられた草摩一族の面々とふれあっていくというもの。透と猫憑きの草摩夾との恋愛も描かれるが、トラウマと対峙する登場人物たちの悩みや悲痛な過去描写が「とにかく泣ける」と評判だった。
『フルバ』は2019年から2021年にかけて再度アニメ化され、原作の最後までが描かれている。しかし、大地丙太郎監督による2001年のアニメ版は今もファンの間で人気が高い作品で、岡崎律子さんによる主題歌『For フルーツバスケット』をはじめ、全体的に柔らかいイメージのアニメとなっていた。アニメでハマり、『フルバ』目当てで『花とゆめ』を購入していたという人は多いだろう。
それより少し若い世代にも人気だったのが、2004年にテレビアニメ化された樋口橘さんによる『学園アリス』だ。2002年から2013年と長期にわたって連載された同作は、特別な天才しか入学できないエリート校・アリス学園を舞台に、天真爛漫な関西弁の少女・蜜柑が繰り広げるドタバタファンタジー作品。主人公が小学生のところから物語が始まったため、『花とゆめ』の購買層もグッと若くなったのが印象的だった。