■学生時代に描いた激レア作品も
水沢めぐみ氏は、16歳という若さでプロデビューを果たした実力派作家。大学在学中には初の長編作品『ポニーテール白書』(1985年)の連載をスタートし、『姫ちゃんのリボン』(1990年)といった名作を次々と生み出した。60歳を超えた現在も『姉系プチコミック』で『空の音色』を連載中というバイタリティーに満ち溢れた人物だ。
高校在学中に手がけた読み切り作品は、多くが女子高生を主人公の甘酸っぱい青春ラブストーリー。初期の作品は学生だった作者自身とリンクする部分も多く、たとえば1980年発表の足に障害のある女子高生と彼女の家に下宿している浪人生の恋物語『坂道は夢を…』では、水沢氏の母校もそうだったという、坂道の上にある学校を舞台にしている。
さらに1981年に発表した『風をみつけた』では、自身も入っていたという“卓球部”が物語の鍵となっていた。これら2作品は、1981年発行の初コミックス『5月のお茶会』に収録されている。
1999年に隔月掲載されていた『きゃらめるダイアリー』も、水沢氏らしいピュアな恋愛描写に溢れている作品だ。同作の主人公・山野花はプロの漫画家として活動する中学生。同級生の太郎のことが好きだが、次第に双子の弟・二郎にひかれていくというラブストーリーだ。
おっとりしていて不器用な兄・太郎に対し、態度は悪いが根が優しく器用な弟・二郎という少女漫画らしい構図や二人の間で揺れる主人公の乙女心は、ほっこりした気持ちになれること請け合いである。
『りぼん』黄金期を支えた作家たちが初期に描いた短編作品は、どれも初々しさを感じる良作ばかり。中には絶版になっていてなかなかお目にかかれない作品もあるが、チャンスがあれば是非チェックしてみてほしい。