矢沢あいに小花美穂に水沢めぐみ…黄金期『りぼん』作家たちが描いた「読み切り&短編」の隠れた名作たち デビュー直後のレアな作品も!の画像
『りぼん展』より

 80年代から90年代前半にかけて黄金期を迎え、1993年には発行部数255万部を記録した『りぼん』。当時掲載されていた作品はいずれも女子たちを夢中にさせた漫画ばかりで、今なお根強い人気を誇っている。

黄金期の『りぼん』ではアニメ化やドラマ化された作品もあり、そこから各作家の別の作品に触れたという人は多いだろう。デビュー直後の作家の1話のみの読み切りや、数話で構成された短編が本誌に掲載されることもあり、たくさんの漫画家がここから売れっ子になっていった。短編集としてまとめられた人気作家の1冊のコミックスを、今でも大切に所持しているというファンも少なくないのではないだろうか。

 今回は、黄金期の『りぼん』を支えていた有名漫画家たちが描いた読み切り・短編作品を振り返りたい。いずれも短いページでありながら、何度も何度も読み返したくなる読み応えたっぷりな名作ばかりだ。

■繊細な心理描写のスキルは昔から高かった...!

 最初に紹介していくのは、『天使なんかじゃない』(1991年)や『NANAーナナー』(2000年)などで知られる矢沢あい氏の短編作品。

 矢沢氏は1985年に『あの夏』でデビューし、1986年には『りぼん』で短編作品『ラブレター』を発表している。同作は、数学教師に想いを寄せる女子中学生・星野ひとみのラブストーリー。叶わぬ恋とはわかっていても止められない想い、そんな彼女にちょっかいを出す同級生の男子という中学生らしい甘酸っぱい恋愛の構図が見どころだ。

 さらに、1987年には短編作品『風になれ!』が連載された。こちらは、中高一貫校に通う中学1年生の酒井由紀が、駿足を見いだされテニス部から陸上部に転部したことから始まる青春物語。

 自分の才能を認めてくれた高校2年生の名古屋秀樹への淡い恋心と切ない三角関係、陸上への高まる情熱と葛藤、同性の先輩への憧れや嫉妬など、繊細な年頃である由紀の等身大の心の揺らぎが丁寧に描かれている。

 名古屋先輩は、クールながら優しく主人公を見守る王道のイケメン。由紀の涙を拭ったり頭をクシャっと撫でたりと、どこか『天ない』の須藤晃を彷彿させるシーンもあり、胸キュンポイントが高い。

■複雑なバックボーンや切ない人間関係を描いたら天下一品

 1990年に『窓のむこう』でデビューを果たし、捨て子、いじめ、ネグレクト、学級崩壊といった重いテーマを描いた『こどものおもちゃ』(1994年)で、読者に衝撃を与えた小花美穂氏。

 小花氏の作品は、少女漫画によくあるキラキラした世界で生きている登場人物が少ない。苦労経験や辛い過去を持ちながらも、必死で自分を守りながら生きている。

 そんな小花氏が1993年に描いた短編作品が『せつないね』だ。主人公はパチンコ店経営者の娘・千絵で、恋人の郁子と駆け落ちしてきたパチンコ屋従業員の恭司に恋をしていた。が、千絵は恭司を好きなあまり郁子の親を呼び出し、二人の駆け落ちを終わらせてしまう。

 自分のしたことの大きさを悔いながらもなお恭司を求めてしまう千絵、郁子への喪失感に覆われる恭司。二人の交わらない心は、まさに「せつないね」と言わざるを得ない。

 1994年に発表した『この手をはなさない』もまた、過酷な世界で生まれる純愛物語だ。主人公は中野恒で、彼の初恋相手・光部由香子は母と二人で借金取りに怯えて暮らす少女だった。転校を機に離れてしまったが、高校生の頃にガリガリに痩せてみすぼらしくなった由香子と再会したことで運命の歯車が回りだす。

 由香子は、他界した母から無理心中を迫られていたり借金取りに追われていたりとダークな人生を送っていた。恒は彼女を献身的に支えるが、とんでもないトラブルに見舞われてしまう……。過酷な環境の中で育まれる真実の愛を描く、小花作品の魅力が短いページにギュッと詰まった作品だ。

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