■憧れた父のスタイルが間違っていないことを証明したい! 『はじめの一歩』宮田一郎

『週刊少年マガジン』(講談社)で、1989年から現在もなお連載が続く人気漫画、森川ジョージ氏の『はじめの一歩』でも、父の思いを受け継いだキャラクターが登場する。それが、主人公・幕之内一歩の最大のライバルとなる宮田一郎だ。

 一郎の父は東洋太平洋王者として6度防衛。その華麗なボクシングスタイルに憧れを抱いていた息子・一郎だったが、7度目の防衛戦で顎を砕かれて父は引退を決意。それまで父を支えてきた周囲の人間は去っていき、母親さえも幼い一郎を置いて出ていってしまう。

 一郎はその悔しさから父のスタイルが間違っていないことを証明するため、ボクシングをはじめるのだ。そして、自分以上の才能を見せる息子に父も感化され、専属トレーナーとして活動を開始。セコンドとして、試合でも一郎を支えていく。

 一郎の父は初登場時からちょっと怖かった。強面だからかもしれないが、どう見ても悪役側に見えてしまう。しかし、根は心優しく一郎のことを誰よりも理解しながら側で成長を見守る良い父親だ。

 一郎は次第に一歩との再戦のためにこだわりを見せるようになっていくが、実際には父の強さを証明するためだった。あれほど熱望した一歩との再戦を蹴ってまで、父を倒したラクーン・ボーイの息子であるランディー・ボーイ・Jr.との対決に臨んだほどである。

 キャラクターランキングでも毎回人気の一郎だが、父の思いを胸にクールに装う姿はカッコいいものだった。

 

 スポーツ漫画には感動を呼ぶ展開が多く見られるが、そのほとんどは試合で勝敗が決定するシーンだろう。しかし、今回紹介したような親子の絆を描いたエピソードというのもまた素晴らしく、大いに感情を揺さぶられるものだ。年齢を重ねたこともあるだろうが、今、見返してみると当時と違った新たな感動を味わえるな。

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