■ダークなテーマをコメディに昇華

 最後は、1994年から連載が始まった小花美穂氏の漫画『こどものおもちゃ』に登場した羽山秋人を見ていこう。彼は、複雑な家庭環境のせいで精神的に追い詰められており、倉田紗南と出会うまでは荒れに荒れていた。

 しかし、全力でぶつかってくる紗南と関わるうちに心を開き、優しさを取り戻していく。紗南に恋をしてからは感情表現も増え、当初の羽山とは180度違うカッコよさを見せていた。

 たとえば、家庭の問題を解決してくれた紗南に感謝と自分の気持ちを伝えるシーン。照れながらも「お前が…おちこんだり…したら… 力になってやりたい… とか思ってる…のだ。だから…その…泣きたくなったら オレんとこに来い」と言った羽山に胸キュンした女子は多いだろう。

 物語の最終局面で、人形病になってしまった紗南に見せた素直な気持ちも印象的だ。病気を認めない紗南を「いーかげんにしろっ!」と一喝した羽山は、「オレだってお前と離れたらさみしーに決まってんだろ!」とついに本音をぶつける。

 さらに、泣きながら「ホントは…オレの方がさみしーんだ。お前と…離れたら ダメんなるのはオレの方だ!」と心の内を明かしたのである。この言葉で紗南は目を覚まし、いつもの自分に戻っていく。

 小森和之のエピソードもインパクトが強かった。小森にとって羽山は憧れの存在だが、精神不安定になり羽山との心中を計画する。羽山は「オレ悪いことたくさんした。悪いと思ってもとりかえしがつかないから…だから今できることをする。」と恐怖を抑えて小森と向き合った。その後とんでもない事態になってしまったが、過去の行いを悔い、危険を承知で行動に出た羽山はかっこいいの一言に尽きる。

 少女漫画に登場するちょいワル男子たちの言動は、女子が喜ぶツボをガッツリと突いてくる。ページをめくりながら、「こんなこと言われたい!」と悶絶した読者も多いのではないだろうか。

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