■事前の打診ナシ!ラストでいきなりの異動勧告
事件は第23話で起きた。冒頭で悪の組織「機械帝国ブラックマグマ」に、アマゾンキラー(賀川雪絵)という新幹部が登場する。
一方で、太陽戦隊の新しい基地がお披露目され、そこをバルイーグル=大鷲龍介(川崎龍介)の同期だという飛羽高之(五代高之)という人物が訪れる。
そして、クライマックスでサンバルカンが機械生命体・オオダコモンガーを倒したあと、ラストのシークエンスで太陽戦隊の嵐山長官(岸田森)が、唐突に大鷲に告げた。「すまんが、ただちにNASAに飛んでくれないか――」眼の前にいる飛羽高之は自分の後任として招集されたのは明らかだ。大鷲は前フリなしの“異動勧告”を断ることができなかった。
後年、番組プロデューサーはこの主役交代について、“強化策の一環だった”といった旨を語っている。確かに同タイミングでの新悪役や新基地の登場があり、番組後半戦に向けてのテコ入れが敢行されたのは間違いなかった。
ただ、それなら刑事ドラマの殉職回のように、大鷲の退場をストーリーのメインにして盛り上げてもよかったのではないか。事前にNASA行きの打診を受け、本人がひそかに迷う設定で数話を引っ張る手もあったはずだ。また、最終回や映画版に大鷲をゲスト出演させれば目玉のひとつとなっただろう。だが、そうしたことは一切なかったのだ。
そもそも、演じた川崎本人も「台本を渡されて降板を知った」というのだから驚きだ。共演者も寝耳に水だったという。まるで大鷲……というより川崎を番組から降板させることが優先事項だったようにも感じられるのである。これに関連して、川崎と当時の所属プロダクションとの契約問題が背景にあるという説もある。確かにそれなら辻褄が合う。
この『太陽戦隊サンバルカン』の主役交代劇で興味深いのは、すれ違った2人の俳優にある意外な共通点があることだ。