今、ゲームの世界に革命が起きている。「小よく大を制す」あるいは「ジャイアントキリング」か、大手ゲーム会社に属さない、小規模なゲーム開発をインディペンデント・ゲーム(通称インディー・ゲーム)がビックヒットを記録しているのだ。
インディー・ゲーム『パルワールド(Palworld)』(ポケットペア)が、アーリーアクセス(正式リリース前の先行配信)としてリリースされてから約2週間で、なんと1900万人以上がプレイするという記録を成し遂げた。ピーク時の最大同時接続プレイヤー数は約210万人を達成。それらの数値は、6万タイトル以上を扱うPCゲームの配信プラットフォーム「Steam」においてもトップ3に入る記録となったのだ(2024年1月19日~2月6日)。23日には、総プレイヤー数が2500万人を突破したことも発表された。
ただ、ご存じの方も多いと思うが、この『パルワールド』はリリース直後、「『ポケットモンスター』に酷似している」と話題になり、ネット上で大炎上した。『パルワールド』は「パル」と呼ばれるモンスターたちを、「パルスフィア」というボールで捕獲し、捕まえたモンスターたちを育てたり、戦わせたりしてフィールドを冒険したり、拠点を拡大したりしていくというもの。
このゲームの流れだけを見ると、確かに『ポケモン』ライクではある。だが、炎上してしまった最大の理由は、「パル」の造形が、『ポケモン』シリーズに登場する生き物「ポケモン」そっくりだったことだ。
イーブイそっくりのミルフィー、エレキブルそっくりのエレパンダ、ルカリオそっくりのアヌビス……。もちろん「完全に一致」というわけではない。シルエットこそ「ポケモン」のように見えるが、細部のディティールが違うため、しっかり見ると両者の違いがわかるようにはなっている。とはいえ、『パルワールド』のビジュアルやゲーム画面をパッと観たときに『ポケモン』に似ていると連想してしまうのはやむなしと言わざるを得ない。
しかし……しかしである。パクリゲームだから、といって『パルワールド』を遊ばないのはもったいない。無視するには惜しいほど、ゲームの部分がよくできているのだ。元ネタと言われている『ポケモン』とは違う、新しい体験がそこにはある。
■「パクリ」と捨て置くには惜しい、野心的ゲームシステム
まず、何よりも面白いのは「クラフト要素」だ。このゲームはいわゆるオープンワールド(さまざまなフィールドを自由自在に行き来できる大きなステージでプレイするゲーム)であり、雪山から火山、森林から湖や海まで様々な地形が広がっている世界(パルパゴス島)を冒険することになる。
冒険するといっても、ただ歩くだけではすぐに食料が尽きて倒れてしまう。そこで拠点を作って、そこに「作業台」を置き、「つるはし」や「斧」などの道具を作って、木材や石などの素材を集めていくのだ。そして食料を生産できる農地を開拓したり、家具や小屋を作ったり(クラフト)して、どんどん拠点を拡大していくのである。
ネット上ではこういったクラフト要素を、恐竜サバイバルゲーム『ARK:Survival Evolved』との類似で語られることが多い。確かに『ARK』のシステムに似ているところもあるが、このあたりはむしろクラフトゲームの王道的な要素であり、『パルワールド』を遊びやすくする、間口の広さをもたらせているといえるだろう。