■異例の拡大スペシャルに、3話一挙放送の作品も
2023年は初回放送が拡大スペシャルとなる作品が多かった。『週刊少年サンデー』(小学館)で連載中の原作・山田鐘人氏、作画・アベツカサ氏による同名漫画を原作にした『葬送のフリーレン』のアニメ初回は2023年9月29日に「初回2時間スペシャル〜旅立ちの章〜」として、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)の枠で2時間スペシャルで放送された。アニメの1話が『金曜ロードショー』内で放送されるのは初めてのことだ。
同作は勇者パーティーが冒険するストーリーかと思いきや、舞台は勇者一行が魔王を倒して王都に凱旋した後の話となっている。1000年は生きる長命種のエルフである主人公・フリーレンが、かつての仲間が寿命で亡くなった後にその軌跡を辿っていくという話だ。
1話にて共に旅をした勇者ヒンメル、僧侶ハイターが亡くなってしまうのは意外だった。命の営みの尊さを感じる、丁寧に描かれるストーリーは老若男女問わず好評だ。
ちなみにこちらも主題歌はYOASOBI。年末の紅白歌合戦でどの曲を披露するのかが注目の集まるところだ。
ところで、アニメの初回放送として拡大スペシャルを放送する背景には、視聴者が1話を見て視聴をやめてしまう「1話切り」を防ぐためだと言われている。一般的には「3話ショック」という言葉がファンの間でたびたび話題となるように、物語のあらすじが分かり始める3話前後で衝撃的展開を迎える作品が多いが、拡大放送をすることで物語のヒキの部分まで視聴者の流出を防ぐことができるというわけだ。
そうした傾向からか、2023年放送のアニメでは『薬屋のひとりごと』が、初回放送で第1話から第3話の連続放送を行った。ミステリー要素のある同作では、主人公の猫猫がさまざまな事件を持ち前の好奇心と知識欲で解決していく。どんな内容が展開されるか分かる(どんな心構えで同作を楽しめば良いのかわかる)のが、この3話までだったのだろう。
拡大スペシャルではない作品で衝撃的な幕開けを迎えたのは『地獄楽』。主人公が死罪人として処刑されるところから始まるシーンと、そこから自身の愛する妻に再会するためにさらに困難な「不老不死の仙薬探し」を始める展開は、独自の悲壮感漂う世界観もあいまって衝撃的なものだった。
2023年もアニメは大豊作の年だったといえるだろう。年末年始は、2023年の話題作をあらためて一気見するのもいいかもしれない。