『ポケットモンスター』『MOTHER』『ファイナルファンタジー』。これらはどれも、誰もが知っている名作RPGシリーズだ。RPGでは、次にたどり着く「街」や「村」がどんなところなのか、どんなイベントがあってどんな物が売っているのか、考えただけでワクワクするもの。
しかしそんな気持ちとは裏腹に、たとえば『ドラゴンクエスト』でのドムドーラのように滅ぼされた街であったり、『ドラゴンクエストIV』で登場した毒ガスが漂う炭鉱・アッテムトのように、入った第一歩から哀愁漂う不吉なBGMが流れ、どんよりと荒廃したグラフィックで描かれる町もある。
そんな中で、多くの人のトラウマ級の思い出であろう、小学生プレイヤーには怖すぎた街を3つ紹介していこう。
■『ポケットモンスター赤・緑』「シオンタウン」
RPGの怖くてトラウマな街といったら、『ポケモン』シリーズ1作目『ポケットモンスター赤・緑』(1996年)の「シオンタウン」は外せない。
次々に登場するかわいくてポップな「ポケモン」たち。公園のように自然豊かな、RPGにしては穏やかなフィールドデザインに、コミカルなストーリー。そういった『ポケモン』の世界に慣れたころに、突如として現れる奇妙な街が中盤で訪れるシオンタウン。それまでと全く違う無機質で物悲しいBGMが流れる演出も不穏さを掻き立てる。
街は山に囲まれており、全体的にどこか殺伐とした雰囲気。冒険を進めるためにポケモンタワーに入ると、そこには大量の墓があり、何をしても効かない謎のポケモンとエンカウントする。それまでの冒険とのギャップも相まって、小学生には怖すぎる街だった。
シルフスコープが手に入り、普通の状態へ戻り始めてからも、ポケモンタワーの墓は、正真正銘「ポケモンの墓」。つまりポケモンの死に直面することとなる。さらに、頭に骨をかぶったポケモン「カラカラ」も不気味だったりと、薄気味悪い要素が続いていく。
牧歌的な雰囲気のポケモンに現れた、現実的な「死」の要素と、ホラーな演出。当時の小学生の多くにトラウマを植え付けた街といって間違いないだろう。
■『MOTHER2』「ムーンサイド」
1994年にスーパーファミコン用ゲームとして発売された『MOTHER2 ギーグの逆襲』もまた、『ポケモン』と同じく牧歌的で絵柄のポップさが特徴のRPGだ。当時のRPGでは剣と魔法のファンタジー世界が主流で、メカや宇宙のSFもチラホラあったかというくらいだった。そんな中で、まるで夏休みの体験のような、日常から地続きとなった雰囲気で描かれるRPGは新鮮だった。
だからこそ、『MOTHER2』で急に登場する“不穏”な演出が際立つ。
3番目に訪れる「スリーク」は、街全体がホラーテイストに仕上がっていて、幽霊やゾンビパニックを彷彿とさせる街だった。「ハッピーハッピー村」は、カルト宗教に支配されている様子で、また違った怖さが感じられた。
そんな中で特にトラウマだったのが、高層ビルが立ち並ぶ都会的な雰囲気の「フォーサイド」。表はニューヨークのような大都会なのだが、「ボルヘスの酒場」から裏世界「ムーンサイド」に入ることができ、そこでは景観がギラギラのネオンカラーに変わってしまう。
建物はもちろん自然物である木までがネオンカラーで、住民たちのセリフも不可思議。「はい」と「いいえ」が逆さまになっていたり、「ムムーーンンササイイドドへへよよううここそそ」「けずって あげようか? おれは けずるの すきだな」と意味不明なものになっていたりと、“ヤバい”雰囲気が漂っている。なかなか抜け出せず、敵も多くエンカウントする、悪夢を見ているかのような街で、当時ここが怖かったという人は多いのではないだろうか。