■探し物は何ですか? 「シーブック・アノー」

 最後に『機動戦士ガンダムF91』の主人公、シーブック・アノーのトンデモ発言を紹介したい。

 ラフレシアとの激しい戦闘の最中、鉄仮面によって宇宙空間に放り出されてしまったセシリー・フェアチャイルド。シーブックの必死の猛攻によってすぐさまラフレシアを撃墜するも、セシリーの姿はすでに宇宙の闇の中に消えてしまっていた。

 その後、母・モニカの助けを得て、F91のバイオ・コンピューターにニュータイプであるシーブックの感知能力を合わせ、セシリーの存在を「感じる」という捜索方法を取るのである。

 途方もない捜索に弱音を吐きながらも上方に何かを感じ、バーニアを装着してコックピットを飛び出すシーブック。「感じられたの? セシリーを!」と、モニカが問いかけると、「違うんだ。あれ、花なんだ! セシリーの花なんだよ!」とバーニアを装着し、自ら宇宙空間に飛び出していく。そして花を見つけ、やがてセシリーに辿り着き、美しいエンディングを迎えるのだ。

 しかし、セシリーを探していたはずが“花を見つけた”と言われ、突如宇宙空間へ飛び出していく彼を見送るモニカの不安はいかほどだっただろうか。その感覚は確かなのか、仮に見つけたとして元の場所に戻って来られるのかなど、さまざまな不安が頭をよぎったことだろう。

 ついモニカの立場に同情して「セシリーを見つけた!」とはっきり言ってほしくなってしまう、シーブックのニュータイプらしいトンデモ発言である。

 

 その常軌を逸した能力をもって、さまざまな功績を残してきたニュータイプたち。ニュータイプには「人と人が誤解なく分かり合える」という一つの概念があるものの、今回紹介したようなあまりに優れたニュータイプたちに共感するのは、いささか難しいと言えるかもしれない。

 ニュータイプの愛すべき要素であるトンデモ発言。今後の作品でも注目していきたいポイントである。

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