『ポケットモンスター』シリーズには、”幻のポケモン”が存在する。通常プレイではゲームに出現せず、イベントやキャンペーンでの配布でしかゲットできない貴重なポケモンだ。
とくに平成初期の幻のポケモン捕獲は過酷を極めた。配布イベントに参加できなければお目にかかれず、インターネット通信もないので交換すらままならない。幻のポケモンは本当の意味で“幻”だった。
そんな状況から「裏技で幻のポケモンがゲットできる」というデマが当時はよく流行り、何人ものプレイヤーが騙された。筆者も嘘の捕獲法を信じては、血眼になってチャレンジしたものだ……。
今回は、”幻のポケモン”にまつわるデマや都市伝説を紹介していこう。あなたが試した“ガセネタ”はあるだろうか?
■捕獲バグでセーブデータが破損…『赤・緑』ミュウ
まずは『ポケットモンスター 赤・緑』(1996年発売)で初登場した、ミュウの都市伝説を見ていこう。シリーズ初の”幻のポケモン”は、子どもたちの憧れの的だった。
公式のプレゼント企画には20名の枠に8万人近い希望者が出るなど応募が殺到し、正規の入手は困難。それでもミュウが欲しいトレーナーたちがすがりついたのが、嘘の捕獲情報だ。
有名なのは「サント・アンヌごう」から行ける隠しマップが存在する、という都市伝説だろう。
まず、クチバシティに停泊する豪華客船「サント・アンヌごう」のある港から「なみのり」をする。そのまま海上をひたすら移動すると謎の陸地が出現し、上陸するとミュウと出会える……とそんな内容だ。
隠しマップの名前は噂によって異なり「アジア村」「南アメリカ」「アメリカ村」などと呼ばれていた。もちろん、そんなマップはゲームに存在しない。クチバシティに停まっている意味深なトラックを動かすとそこにミュウがいる、という噂も広まっていた。
また、バグ技でミュウ捕獲に挑む者も多かった。「特定の行動をするとタマムシデパートでミュウが釣れる」「コイキングをミュウに変える」など、ゲームの不具合を利用した危険な裏技だ。実行すればほぼ間違いなくセーブデータが破損する。
バグ技でミュウをゲットするもゲームがまともに遊べなくなり、泣きながらデータをリセットした……なんて経験をした人も多いはずだ。
セーブデータを破壊してでも手に入れたい。あの頃のミュウには、そんな魔性じみた魅力があったように思う。
■祠の前にホウオウとルギアを…『金・銀』セレビィ
『赤・緑・青・ピカチュウ』の続編『金・銀』(1999年発売)では、“幻のポケモン”としてセレビィが実装された。セレビィならば「ウバメのもりのほこら」にまつわるデマがとくに有名だろう。
内容は、森の神様をまつっている祠の前に伝説のポケモン・ホウオウとルギアを連れてくるとセレビィが出現する、というもの。ホウオウとルギアにアイテム「きんのはっぱ」「ぎんのはっぱ」を持たせておくと成功しやすいとも囁かれていた。(成功しやすいもなにも、ガセなので絶対に失敗するのだが……)
また、ホウオウとルギアをコガネシティの育て屋に預けて祠に向かうとタマゴが落ちており、中にはセレビィが入っている、なんて噂もあった。こちらは少しロマンチックだ。
いま思うと、セレビィの植物の種っぽい見た目や、やけに意味深な祠の存在感が噂が元となったのかもしれない。
ちなみにセレビィと「ウバメのもり」の祠には、のちの『クリスタルバージョン』(2000年発売)や『ハートゴールド・ソウルシルバー』(2009年発売)で関連イベントが実装されている。都市伝説が時を経て現実になったかたちだ。
セレビィの分類は「ときわたり(時渡り)ポケモン」……なんとよくできた偶然か。