■お嬢様役はハマり役?『エースをねらえ!』松本莉緒
70年代にテニスブームを巻き起こした山本鈴美香さん原作の『エースをねらえ!』。『週刊マーガレット』において1973年〜1975年に第一部、1978年から1980年に第二部が連載され、多くの少女達のハートを掴んだ名作である。
二度にわたってアニメ化もされているが、「旧エース」と呼ばれる第一作目は途中で低迷してしまった。しかし、その後『新・エースをねらえ!』がヒットし、劇場版も制作されている。実写化されたのは平成に入ってからで、2004年の1月からテレビ朝日の開局45周年記念ドラマとして制作された。
『エースをねらえ!』に登場する「お嬢様」といえば、岡ひろみも憧れたお蝶夫人こと竜崎麗香。金髪の縦ロールを揺らしながら軽やかにコートを舞うお蝶夫人は、同作品の中でもインパクトが強くたちまち人気キャラとなった。
そんなお蝶夫人を実写ドラマで演じたのが松本莉緒さんである。彼女は1997年と1998年にテレビ朝日系で放送されたドラマ『ガラスの仮面』でも姫川亜弓を演じていたが(松本恵名義)、“縦ロールのお嬢様”役がよく似合う女優だと思う。『エースをねらえ!』でも黒髪ではあれどクリクリの縦ロールをなびかせ、お蝶夫人のイメージにうまく寄せていた。
原作が連載されていた70年代と2000年代は、時代背景も大きく変わっている。だが、松本さんは昭和の雰囲気を残しながらも平成にもマッチするような高貴でストイックなお蝶夫人を演じきった。
現実世界にいる大金持ちのお嬢様には、漫画のように高飛車だったり「オホホ」と笑ったり縦ロールヘアだったりというタイプはいないかもしれない。そういったわかりやすいお嬢様のイメージは、漫画だからこそ成り立つものだ。しかし、今回紹介した女優たちは漫画のキャラを忠実に再現し、現実世界とリンクさせることに成功したと言えるのではないだろうか。