『SLAM DUNK』桜木花道に『キャプ翼』日向小次郎……猛練習の末に体得した渾身の必殺技!! 読者を驚かせたスポーツ漫画キャラの特訓エピソードの画像
『SLAM DUNK THE MOVIE』Blu‐ray(東映)

 スポーツ漫画に登場する数々の必殺技には、その使い手であるキャラクターそれぞれの持ち味が表れている。そして、それを身に付けるに至るまでに、ほとんどの場合は特訓など地道な努力が積み重ねられている。中には並外れた才能によってあまり努力をしないキャラクターもいるが、それがコツコツ努力するタイプに敗れてしまう、というのもまたお約束のひとつだ。「努力なくして勝利はあり得ない」という教訓が納得のいく形で見せ付けられるのもまた、スポーツ漫画の醍醐味なのだ。

 しかし、その努力の仕方がありきたりではつまらない。常人ではあり得ないほどの練習量や練習方法によってしか身に付かないからこそ、必殺技が発動したときのインパクトも大きくなるのだ。

 そこで今回は、スポーツ漫画の中で、必殺技を体得するためにキャラクターが猛特訓を積んだエピソードを紹介していきたい。

■1週間で2万本!!『SLAM DUNK』桜木花道のジャンプシュート

 まずは、井上雄彦氏によるバスケットボール漫画『SLAM DUNK』(集英社)の桜木花道のエピソードから紹介しよう。バスケ部に入った当初はド素人だった花道だが、経験を積むうちに、いかに基礎練習が大事かということを知っていくことになる。

 バスケットボールの基本のシュートといえば、レイアップシュート、セットシュート、ジャンプシュートだ。花道は当初、レイアップシュートのことを「庶民のシュート」と馬鹿にしていたが、練習を重ねて楽しくなっていく。「置いてくる」をヒントに、シュート成功率も上がり、新たな武器を手に入れたと思えるようになる。

 しかし、それだけでは強豪校を倒すのには不充分。そこで安西先生が花道に出した課題がジャンプシュートである。このシュートの鍵となるのは膝や肘の使い方で、力を入れすぎず適度にリラックスする必要がある。膝を柔らかく使い、脇を締めてシュートを放つことが大事なのだ。安西先生のアドバイスを受けながら練習を重ねた花道は、見事にジャンプシュートを身に付けていくが、驚きなのはその練習量だ。

 安西先生から課せられた課題は、1週間の合宿の間にシュート2万本を打つというもの。単純計算しても1日3000本近くになるので、10時間練習するとしても1時間あたり300本弱。普通ならやる前から無理と思ってしまうことだろう。しかし花道は、晴子や桜木軍団の応援にも支えられながら、恐るべき集中力でこの課題をクリアしていく。

 かくしてジャンプシュートという新しい武器を手に入れた花道の活躍もあったからこそ、湘北は山王工業という強大なチームにも勝つことができたのだと言えるだろう。最後のチャンスで「左手はそえるだけ…」とつぶやく花道、それを見て初めてパスを出す流川。この2人の連携によってジャンプシュートを決めた花道の姿には、読んでいて思わず鳥肌が立ってしまったのを今でも覚えている。

■台風が迫る浜辺で荒波を打ち抜く!!『キャプテン翼』日向小次郎のタイガーショット

 次は高橋陽一氏によるサッカー漫画『キャプテン翼』(集英社)の日向小次郎にまつわるエピソードだ。小次郎は貧しい家庭環境もあって誰よりも貪欲に練習し、勝ちにこだわるというサッカーに全身全霊を注いでいるような男である。

 そんな熱すぎる男はライバルの翼に負けまいと、新たな武器をものにするため小学校時代の恩師である吉良監督を訪ねて指導を仰ぐ。課せられた特訓の内容はあまりにも過酷だった。それは、折しも台風が襲来する沖縄の浜辺で、シュートを放って荒波を打ち砕く、というもの。

 下手をすれば命の危険すら伴う行為だが、打倒・翼に燃える小次郎は意にも介さず一心不乱に繰り返しシュートを放ち続ける。そして、ついには強靭なキック力を手に入れて「タイガーショット」を完成させることができたのだ。

 驚くべきはその破壊力で、コンクリートの壁にめり込んでしまうほど。いやいや……ボールが壁にめり込むなど本来はあり得ない。しかし、当時読者だった小学生は自分たちもできると信じて、小次郎の「タイガーショット」を真似したものだ。

「タイガーショット」はその後も進化をし続け、色々な派生形を生むことになり、小次郎の代名詞とも言える必殺技となっていく。その根底には、沖縄での尋常ならざる特訓があったのだ。

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