■切ない三角関係『星の瞳のシルエット』森下真理子
柊あおい氏の漫画『星の瞳のシルエット』からは、森下真理子を紹介したい。森下真理子は、主人公・沢渡香澄の親友の一人。甘いものに目がなく、女の子らしくシャイな性格をしている。そして、真理子は香澄にとって運命の相手とも言える「すすき野原の男の子」・久住智史に片思いをしていた。
最初こそ、久住が「すすき野原の男の子」だと気づかない香澄は真理子の恋を応援する。しかし、久住と親しくなるにつれ次第に高まる自分の気持ちを抑えきれなくなっていく。真理子は、香澄と片思いしている久住が仲良くなっていく様子を一番近くで見ていたのだ。当事者の目線で見れば、この構図はとても切ないだろう。
真理子は一途で、良くも悪くも自分の想いに忠実。感情的になりがちな部分はあるが、久住に対する好意もわかりやすかった。久住と仲良くなると嬉しそうにするし、香澄に対しても嫉妬心を垣間見せていたほどだ。
一方の香澄は久住が想い続けていた相手だと知るが、真理子の気持ちを知っているだけに自分の気持ちを抑え込んで友情を取ろうとする。しかし、久住も香澄に好意があり両想い状態になってしまう。
高校に入って真理子は意を決して久住に告白し、香澄を忘れようとしていた久住はそれにOKをだす。ただ、香澄に対する気持ちがあることを知っている上で付き合った真理子は、久住と香澄の想いに振り回され、最終的には久住から「好きな人がいる」と振られてしまう。報われない恋をしていた真理子が、日野と結ばれたときはホッとしたものである。
■元カレへの未練を残す『ママレード・ボーイ』鈴木亜梨実
最後は、90年代に爆発的人気を博した吉住渉氏の漫画『ママレード・ボーイ』から、松浦遊の元カノ・鈴木亜梨実を紹介する。ショートヘアが印象的な明るい性格の彼女は学校中の男子から大人気で、ファンクラブがあるほどにモテモテ。銀太の従兄弟の六反田を始め、熱烈な想いを向けられることも多かった。
亜梨実は、遊園地で光希とデート中の遊と偶然再会する。遊に対する未練がある彼女は、電話番号を書いたメモを遊に渡し、去り際に「やっぱりあなたの方がいいわ」と告げた。自分もデート中だったにも関わらず元カレに腕を組みこの行動を取るとは、高校生ながら小悪魔だ。
亜梨実と遊が付き合っていたのは中学生の頃。当時からモテモテだった遊に対して亜梨実は積極的にアプローチし、「絶対私たち合うから」と3か月限定で付き合うことを提案した。結局3か月後には振られてしまうが、全然自分に興味がないとわかっている相手に対してこの発言をする彼女は中学の頃からかなりアクティブな女子である。
未練に火が付いた亜梨実は、光希に「負けないよ」と宣戦布告もしていた。銀太と口裏を合わせて光希にヤキモチを妬かせ、遊と離れさせようとするなど姑息な手も使っていたが、欲しいもののために手段を選ばない姿は勇ましさすら感じる。優柔不断な光希に対してもはっきり詰め寄っており、一途・ストレート・情熱的な所は魅力の一つだろう。
最終的には遊の気持ちは手に入らず銀太と付き合うが、個人的には遊よりも一途な性格同士の銀太と亜梨実が結ばれてよかったと思う。
今回紹介した3人をはじめ、「当て馬」キャラの女子はみな積極的で愛情深い性格だった。独りよがりな一面もあれど、それも愛ゆえ。恋愛漫画のヒロインももちろん一途なのだが、途中で当て馬男子に心を持っていかれがちなので、当て馬女子の一途な性格が印象に残りやすいのかもしれない。