■親友を思っての行動だった…？『ハンサムな彼女』木村彩子（沢木彩）
１９８８年から連載された、吉住渉氏の『ハンサムな彼女』にもライバルキャラが登場する。それが、ヒロイン・萩原未央の恋敵で、アイドル兼女優として活躍する木村彩子（芸名は沢木彩）だ。
未央が片思いをしていた森本輝臣が彼女に思いを寄せてしまったり、失恋から立ち直った未央が好きになる熊谷一哉とかつて恋人同士の関係だったりと、ことごとく未央の恋路の先にいる彩子。彩子はそれらの事実を、なぜかことごとく未央には隠す。それもまた読者の反感を買ってしまった理由だろう。
しかし、彼女を擁護する視点で考えると、大前提として彩子は未央の親友であり、お互い支え合う存在だったのだ。奇しくも未央の恋の邪魔ばかりしてしまうものの、大事な友である未央に真実を伝えられず苦しい思いをしていたのかもしれない。
同じ人を想ってしまったゆえに作中で“ライバルキャラ”として定着した彩子だが、彼女の気持ちに寄り添ってみると、なんとも胸が締め付けられる。
彼女たちを取り巻く恋愛模様は複雑なものの、紆余曲折はあれど、当の２人は親友としてお互いを支え続けている。未央ももちろんだが、彩子の人柄あってこその“女の友情”は、本作においても重要な主軸だと思う。本作のファンから「ライバルキャラだけど彩が好き」と声があがるのも納得だ。
少女漫画において、ライバルキャラはなくてはならないものだろう。ヒロインたちの恋を後押ししてくれるのは、いつだって彼女たちの存在だった。人の恋路を邪魔することは、やはり褒められたものではないのだが、大人になって作品を見返してみると、また違った視点でライバルキャラたちの気持ちに寄り添うことができる。このように作品を見返してみるのもまた、名作の新しい楽しみ方なのかもしれない。
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