時代を越えて数々の名作漫画を生み出している『りぼん』。甘酸っぱい初恋や、ちょっと大人なドキドキするような物語など、たくさんのことを少女たちに教えてくれたのも『りぼん』だった。
そんな本誌に連載されていたかつての名作のなかには、当時どうしても好きになれなかった“ライバルキャラ”もいた。物語において彼女たちの存在は重要なポジションではあるものの、その立ち振る舞いにモヤモヤすることも……。今回はそんな“ライバルキャラ”たちの言動について、大人になったいま、考えてみたいと思う。
■「わざとだよ?」に悶えた!『NANA』川村幸子
矢沢あい氏による未完の名作『NANA』。2人の“ナナ”の人生を描いたストーリーは、いまでも多くのファンを夢中にさせている。
そんな本作に登場するライバルキャラといえば、川村幸子をなくして語れない。幸子は、当初主人公の1人・小松奈々の“妄想上の人物”として名前が登場していた。妄想体質の奈々は、彼氏である遠藤章司の浮気相手として“幸子”という架空の女性を想像し、一喜一憂していたのだ。
しかし、実際に幸子という名前のかわいらしい女性が、章司の前に現れてしまう。いけないと思いつつも惹かれてしまう章司。終電に間に合わないようにわざと高いヒールの靴を履いた幸子が「わざとだよ?」と言うセリフは『NANA』になくてはならない名シーンであるものの、この一件は多くの読者をモヤモヤさせただろう。
ここで、別の視点から幸子を見てみよう。幸子は章司に惹かれていたとはいえ、彼に彼女がいると知って一度は諦めようとしていた。「彼女がいる人には奢ってもらわない」と口にしたり、一線を引こうともしていたのだ。
しかしそこはやはり惹かれ合う男女……衝動を止めることはできなかった。考えてみると、そもそも“彼女がいる”という事実を最初から幸子に告げていれば、もしかしたら“略奪愛”へと突き進むことはなかったかもしれないし、大切なことを黙っていた章司の責任も大きい。さらに言うとそれまでの奈々のワガママぶりや自分勝手さもかなりのものだったので、章司がふらりと優しくかわいい幸子のもとに行ってしまうのも仕方がなかったような気がしないでもない。
とはいえ、順序を守らずに一線を超えてしまった2人を、心の底から擁護するのはなかなか難しいが……。
■かっこいい去り際が憎めないライバルキャラ! 『天使なんかじゃない』原田志乃
1991年から連載されていた『天使なんかじゃない』は『NANA』と同じく、矢沢あい氏の名作の1つだ。本作では、天真爛漫なヒロイン・冴島翠をはじめとする魅力的なキャラクターが登場する。
“マミリン”の愛称で親しまれているメインキャラクター・麻宮裕子もまた、本作屈指の人気キャラだ。そのため、麻宮のライバルとして登場する原田志乃への風当たりは当時から強かった。
美少女の志乃は麻宮が長い間片思いしている相手・瀧川秀一の恋人で、麻宮の後輩にあたる。その容姿から男子人気は高いものの周りの女子にうとまれることも多く、過去にはいじめを受けていたこともあったようだ。
志乃は中学時代から麻宮が瀧川に片思いをしていることを知っていたが、その恋心に気づかないふりをして、瀧川が麻宮を好きにならないよう根回しをしていた。過去には、麻宮の一世一代の告白をなかったことにするという大罪まで犯している。
健気に瀧川を想い続ける麻宮の気持ちを考えると、志乃の行動は褒められたものではない。しかし今考えてみると、実は志乃もまた“瀧川に恋する女子の一人”だったことに気づく。また、卑怯なことをやっても基本は堂々としており、特攻服の背中に「秀一命」と書いて登場するなど思いきりのいいところは憎めない。
そして、自分の弱さと向き合って成長していく姿もカッコ良く、麻宮に過去の非礼をわび、友達を作り、やるべきことを見つけ、自分の足で歩いていく……そんな去り際も素敵だった。『りぼん』屈指のライバルキャラとして名を馳せるのもうなずける。