『ちびまる子ちゃん』に『おぼっちゃまくん』も… ギャグ漫画家が描いた本当に泣ける「感動ストーリー」3選の画像
おぼっちゃまくん 傑作選(1) (てんとう虫コミックス)/小学館

 日常にクスっとした笑いを届けてくれるギャグ漫画。特に名作として名高いギャグ漫画はいつ読んでも面白く、色褪せない。しかし実はギャグ漫画には、お馴染みの笑える展開だけでなく泣けるストーリーもある。普段はコミカルだからこそ、時折繰り広げられる感動的なストーリーは読者の胸を打つものだ。

 ここでは日本でも有数のギャグ漫画における、泣けるストーリーを3選紹介する。

■親を思う気持ちにグッとくる『ちびまる子ちゃん』たかしくんの巻

ちびまる子ちゃん』は昭和40年代を舞台にした、作者であるさくらももこさんの経験からなるギャグ漫画である。今回泣ける話として紹介するのは、りぼんマスコットコミックス12巻に掲載されている 「たかし君の巻」だ。

 まる子のクラスメイトであるたかし君は大人しい男の子。しかし毎朝遅刻してしまい、男子たちにいじめられている。

 あるときまる子は、たかし君がいじめられていることを家族に話した。買い物に行ったときたかし君親子と遭遇し、息子を心配するお母さんの姿に胸を痛めたのだ。まる子が「誰だって遅刻する、遅刻しがちな私だってぶたれるかも…」と口にすると、おじいちゃんもお母さんも“まる子がぶたれたら泣いちゃう”と涙を見せる。 

 その翌日、たかし君は給食の牛乳を残したからと言ってやはりいじめられてしまう。止めに入ったまる子はいじめっ子から叩かれ、その衝撃でよろめき頭をぶつけて流血。それを見たまる子は「…学校でぶたれてケガしたなんて言ったら……おかあさん泣いちゃうよ」と思わずつぶやき、それを聞いたクラスメイトもことの重大さを思い知るのであった。

 このエピソードではいじめという事件を通し、子どもたちが親の心を思うのが印象的だ。愛する子どもがいじめられたら、親はどれだけ悲しむだろうか。いじめは被害者の子どもだけでなく、その家族も傷つくということを、漫画を通して表現している。

■愛する人を思い懸命に耐える姿に感動『おそ松くん』イヤミはひとり風の中

 赤塚不二夫さんによる『おそ松くん』は、六つ子の主人公を中心に繰り広げられるギャグ漫画だ。「シェー!」のポーズでお馴染みのイヤミは金儲けが大好きな男だが、彼が織りなす感動的なストーリーもある。

 竹書房文庫18巻に掲載されている「イヤミはひとり風の中」は、時代背景が江戸時代になっており、主要キャラはほとんどが貧しい身の上だ。イヤミは食事にありつくため、子どもの飯を奪ったり、若チビ殿の落としたおかずを拾って食べたり、働かずして食事にありついていた。

 そんなある日イヤミは、目の見えない花売りの少女・お菊に出会う。イヤミは最初お菊をだまして小銭を稼ぐつもりだったが、彼女の純粋さに惹かれて目を治してあげたいと思うように。

 目の治療に莫大な金額が必要だと知ったイヤミは、昼夜問わず働き始める。しかし同じくお菊に心を奪われた若チビ殿の妨害に遭い、なかなかお金は貯まらない……。

 最終的にイヤミは「御用金強盗」をおこなってお金を用意する。その結果、お菊は目の治療を受けられたが、イヤミは逮捕され牢屋に入れられてしまった。

 それから4年の歳月が経ち、すっかりみすぼらしい姿になったイヤミは、偶然通りかかったお菊に助けられる。イヤミの見た目を知らないお菊は相手の正体に気付かないまま、自分を助けてくれたイヤミについて「がんばりやだったから きっといまごろ りっぱなおさむらいさんになってるわね」と言う。それを聞いたイヤミは自分の正体を打ち明けられず、「しあわせに なるんらんすよ」という言葉を残して立ち去るのであった。

 イヤミが愛する人のために性格をも変え、一生懸命働く姿が感動的なこちらのエピソード。お菊との運命的な再会があったにもかかわらず、自分の正体を明かせなかったラストはなんとも切ない。

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