漫画にはときに「懐かしい!」と叫んでしまうようなシーンがある。とくに昭和ならではの“昔懐かしのアイテム”が出てくると、非常にノスタルジックな気分になるものだ。そこで今回は、1980年代の少年漫画を中心に“時代”をビンビンに感じさせる小物たちを紹介したい。
■100円の卓上おみくじ機に一喜一憂…『めぞん一刻』喫茶店テーブルにある占い機
『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で1980年から連載された、高橋留美子氏による『めぞん一刻』。
未亡人で美しいアパートの管理人・音無響子と、そのアパートに住む青年・五代裕作との恋物語を描いた言わずと知れた名作だ。本作は昭和を舞台としたラブコメで、魅力的な登場人物たちとともに、懐かしいアイテムがたくさん登場する。
なかでも喫茶店テーブルにある“丸い占い機”、ルーレット式おみくじ機は、昭和世代なら懐かしさを感じるひと品だろう。
お正月に一人で過ごすことになった五代は、暇つぶしに街をうろつく。そこで立ち寄った喫茶店で、卓上の占い機の結果に一喜一憂する女性2人を目にするのだ。
五代は「サ店のおみくじなんて当たるわけないのに…」なんてぼやきつつも、自分もつい100円を入れてしまう。そして、出てきたおみくじの内容を熟読し、響子との運命に想いを馳せる……という微笑ましいエピソード。
ちなみにこの占い機は12星座ごとに100円硬貨を入れる箇所があり、そこに硬貨を入れるとおみくじが出てくる仕組みとなっている。
今はスマホで「占い」と検索をすれば膨大なネット占いがヒットする時代だが、当時は占いを身近に体験できる場所は少なく、もの珍しさもあって喫茶店での占い機は大人気だった。
現在、この占い機のある喫茶店はほぼなくなっているが、本作で登場したルーレット式おみくじ機は今も製造されている。それこそ検索をすればネットで購入することも可能なようなので、興味のある人はチェックしてみてはいかがだろうか。
■流れゆく彗星は過去の想いや今後の願いを表現する…『タッチ』ハレー彗星
「ハレー彗星」とは、約75年周期で地球に接近する彗星であり、近年では1986年(昭和61年)に接近した。肉眼で見えるハレー彗星は「ほうき星」とも呼ばれ、当時の日本ではハレー彗星グッズが売り出されたりと一大ブームになっていた。
そんなハレー彗星が美しく描かれているのが、1981年から『週刊少年サンデー』(小学館)で連載された、あだち充氏の野球漫画『タッチ』である。
主人公・上杉達也が最大のライバルである新田明男との死闘を終え、明青学園が甲子園の切符をつかんだあとのシーン。悲願の甲子園出場が決まり、祝賀会で騒がしい夜をチームメイトと過ごしたあと、達也はひとり家路につく。
ふと夜空を見上げると、そこには満天の星空。そして、そこに一筋の美しい彗星が夜空を走るのだ。彗星を目に達也の心は何を思うのか……静かで印象的なシーンだ。
「彗星」と聞くと華やかなイメージが湧くが、『タッチ』では、達也が新田との壮絶な戦いを終え、疲れ果てた心情や南への想いなどが美しく描かれているように思う。
ちなみに、当時はハレー彗星を取り上げた作品も多くあり、『ドラえもん』(小学館)にも「ハリーのしっぽ」というエピソードが登場していた。