■人生を変える決断の時間…『幽☆遊☆白書』師匠との洞窟シーン

 冨樫義博氏による『幽☆遊☆白書』の雨のシーンは、主人公・浦飯幽助と、その師匠である幻海が洞窟の前で話す場面だ。

 最大の敵である、戸愚呂との戦いを控えた幽助。しかしその力はまだ彼に及ばず、幻海は力を引き出すために最後の試練を与える。それが「あたしを殺さねばこの試練はのり越えられん!」というものであった。

「殺す覚悟が出来たらこい」と、洞窟に入って待つ幻海。すると、その場で立ち尽くす幽助に激しい雨が降ってくるのだ。

 これまで幽助は不慮の事故で死に、死後の世界から多くの人を救い、閻魔大王から与えられた多くの試練を乗り越えてきた。その力を与えてくれたのが幻海である。そんな幻海の命を奪ってまで、自分は本当に強くなりたいのか……。幽助の苦悩を表現しているかのように、雨が激しく打ちつける。

 最終的に幽助は「オレにはできねェ」と、幻海の命を奪うことを拒否することに。荒々しい雨粒が体を打ちつけるなか、自身の信念を固めて道を切り拓くシーンは、今後の幽助がどうなっていくのか、活躍を楽しみにさせてくれるものだった。

 

 漫画を読むうえで、そのシーンの天候を意識することは少ないかもしれない。しかし雨のシーンは、ときにセリフでは説明のつかない印象や情景を読者に与え、切なさや恋心、人生を変える決断までも表現してくれる。あなたの好きな漫画にも雨のシーンはないか、今一度読み直してみてはいかがだろうか。

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