■『ジョジョの奇妙な冒険』アヌビス神

 荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するスタンドには、憑依タイプのものも存在する。それが第3部で現れたエジプト9栄神の1人、アヌビス神だ。普通のスタンドとはかなり異なり、本体はすでに死亡しているにもかかわらず、刀に取り憑いたスタンドだけが残されており、刀に触れたり鞘から抜いたりした者の精神を乗っ取って宿主を変えていくというものである。

 アヌビス神は取り憑いた人間の体を使って刀を振るい、敵を攻撃するのだが、空条承太郎たちジョースター一行の抹殺を目論むアヌビス神がポルナレフに取り憑き、ポルナレフのスタンド「シルバーチャリオッツ」との二刀流になった時には、そのカッコよさに敵ながら思わず心を奪われてしまった。しかし結局は承太郎に刀をへし折られ、残った刀身もナイル川の底に沈み「見捨てないでーッ ヒィィィィィ孤独だよーっ」と叫び声を上げながら再起不能となる。その姿には同情するほかはない。

■『スプリガン』テスカポリトカ

 原作:たかしげ宙氏、作画:皆川亮二氏による『スプリガン』は、これまでNetflixで独占配信されていたアニメが今年7月から地上波放送開始されることが決定し、話題となっている。そんな『スプリガン』にも憑依キャラが登場している。それがテスカポリトカだ。

 聞き慣れない名前だが、モデルはアステカの神で、本来の名前は「テスカトリポカ」。作中では、2千年前に人間や異星人を虐殺した暴君で、他人に憑依することで時代を超えて生き長らえていた。

 テスカポリトカは過去に家族を殺された経緯から人類を恨むようになったが、その振る舞いからも同情することはできない。やっていることのほとんどが、卑劣で卑怯な行為ばかりなので「早く倒してくれ!」と思ったほどだ。そして、その願い通り、主人公・御神苗優と自身の育ての親でもある異星人・ケツアルクアトルによって永久に封印された。憑依を卑劣な手段として用いるキャラクターには、やはりそれなりの報いが待っているのだ。

 憑依や成り代わりによって他人の体を拝借するキャラクターには、それぞれの目的があり、迎える結末も様々だ。安らかに消えていくこともあれば、そのまま生き続けることもあり、さらには悪霊として誰かに滅ぼされることもある。いずれにせよ、本来はすでに自らの肉体を失った存在でありながら「生」に執着するその姿からは、逆に人間らしさが伝わってくると言えるだろう。

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