©2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館/スプリガン Project
アニメ『スプリガン』キービジュアル (C)2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館/スプリガン Project

 漫画やアニメには、他人に憑依したり、魂を成り代わったりすることができるキャラクターがいる。「憑依」と「成り代わり」との違いは何だろうか? 他人に取り憑くことでその肉体の元々の魂と取り憑いた魂の2つが同時に存在する状態を「憑依」、肉体を魂ごと乗っ取ってしまい魂は1つしかない状態を「成り代わり」だと区別できる。

 憑依や成り代わりには、生き長らえるためだったり、やり残したことがあったりと、それぞれに目的がある。そこで今回は、憑依や成り代わりにまつわるキャラクターを、その目的とともに紹介していきたい。

■『ヒカルの碁」藤原佐為

 原作:ほったゆみ氏、作画:小畑健氏による『ヒカルの碁』は、囲碁をテーマにした漫画である。この作品が囲碁を知るきっかけとなったという人は多いだろう。主人公の進藤ヒカルは、平安時代の天才棋士である藤原佐為に取り憑かれてしまう。それをきっかけに、ヒカルは佐為の指示に従って囲碁を打つようになる。

 佐為はどうしてヒカルに取り憑いたのか? それは「神の一手を極める」という目的があったからだ。そんな佐為が現代の棋士と対決する姿は見どころのひとつだが、それと同時に佐為を通してヒカルの成長が見られるのも面白い。

 もしヒカルと同じ立場なら、佐為の力に頼りきりになってしまうかもしれない……と読みながら思ったものだ。しかし、それをしないのがヒカルの良いところで、様々な経験を通じて徐々に成長していく。そして、佐為は現代最強の棋士である塔矢行洋との対局を経て、最高の戦いをヒカルに見せたことで満足し、魂の限界を迎えると、静かにヒカルの前から消え去った。

 佐為は憑依キャラだが、そこに恨みや邪な目的がなく、純粋に囲碁が好きで極めたいという気持ちが伝わってくるからこそ憎めない存在になっていたと思う。個人的には、ヒカルが棋士として成長して佐為と対決する姿も見てみたかった。

■『幽☆遊☆白書』蔵馬

 冨樫義博氏による『幽☆遊☆白書』は、人間界、魔界、霊界を舞台にした作品なので、憑依は大いにあり得る話だ。中でも人気キャラクターである蔵馬は、登場早々に自らが憑依していることを明かしていた。妖狐であった蔵馬はハンターによって重傷を負わされたことで、霊体のまま人間界へと逃亡……そして、人間の胎児に憑依することで生き長らえることに成功し、南野秀一として生活していたのだ。

 蔵馬のことを最初は、力を取り戻すためだけに人間を利用している妖怪だとしか思えなかった。しかし、母子家庭で自分を育ててくれた人間の母親への献身的な姿を何度も見るにつけ、「なんて健気な妖怪なんだ」と印象がガラリと変わったのを覚えている。

 そんな優しさを持つ蔵馬だが、過去にはともに盗賊をしていた黄泉を見限り、刺客を差し向けて殺害しようとしていたこともあるから驚きだ。人間に憑依したことによって、性格が変わったのは明らかである。しかし、それによって蔵馬は、冷酷な面と優しい面を持つ深みのある魅力的なキャラクターとなったとも言えるのではないだろうか。

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