■“和”と“歌”のまさかのコラボレーション!? 『カブキロックス』
和風な世界観といえば“江戸時代”も多くモチーフに用いられるのだが、1994年にアトラスより発売した『カブキロックス』は、あまりにも独特な“江戸”の世界を描いたRPG作品だ。
モンスターが出現するようになった江戸時代をモチーフとした惑星を舞台とし、「モンスター憐れみの令」というお触れによって間違った方向に進む世を立て直すべく、主人公たちが立ち上がる。
史実にもある“生類憐れみの令”をモチーフとした大胆なストーリーもさることながら、本作の最大の特徴はタイトルにもなっている“ロック”……こと、“歌”をシステムのなかに取り入れているという点だ。
従来のRPGでは“呪文”や“魔法”と呼ばれていた概念が、本作では“歌武器”と呼ばれるシステムに変わっており、キャラクターたちが得意とする“歌”の力で戦況を有利に運ぶことができる。
この“歌武器”だが、いずれも現実に存在する名曲をもじったものとなっており、攻撃系の“いい火たびだち”や“冷凍・イット・ビー”、治癒系の“おくる言葉”、補助系の“ハイチューン武器”や“愛のままにわがままに”……など、元ネタを知っている人にとっては思わずニヤリとしてしまうタイトルばかりだ。
また、モンスターのネーミングも妖怪や各地の名産品をモチーフにしたものが多く、江戸時代とSFを混ぜ合わせた独特な世界観も相まって、プレイヤーに与えるインパクトは非常に大きい。
かなりシリアスかつ重々しい展開が差し込まれることも多いのだが、本作特有の世界観のおかげか陰惨な空気になることは少なく、終始明るい雰囲気のまま展開が進んでいくのはシナリオ構成の妙と言えるだろう。
RPGとしての出来栄えはもちろんのこと、一度プレイすると忘れることのできない、実に独特の“和風”テイストを表現した作品である。
一口に“和風”といっても、RPG作品によってその表現の仕方は実にさまざまだ。史実をベースに、妖怪や神といった存在を交えたおどろおどろしいファンタジーから、果ては近未来を交えた架空の時代背景を扱ったものなど、実に個性豊かな“和風”作品が揃っている。