『鬼神降臨伝ONI』に『カブキロックス』も…スーファミRPGの“ちょっと怖かったけど子どもたちを魅了した”和風の世界観の画像
スーパーファミコンソフト『神降臨伝ONI』

 スーパーファミコン(以下、SFC)では『FINAL FANTASY』シリーズや『ドラゴンクエスト』シリーズといった“ファンタジー”を題材にしたRPGが数多く登場したが、一方で日本独特の文化、雰囲気をベースに作られた“和風”な世界観を持つソフトも多い。どこか恐ろしくも、当時の子どもたちを魅了した“和風”テイストなゲームについて見ていこう。

■マシンパワーをフル活用し“正統進化”を遂げた一作!『鬼神降臨伝ONI』

 バンプレスト(現:バンダイナムコエンターテインメント)よりゲームボーイソフトとして発売されていた『ONI』シリーズだが、1994年にSFCソフトにて発売されたのが『鬼神降臨伝ONI』である。本作は鎌倉時代を舞台とした“和風”な世界観が特徴で、人間と妖怪が織りなす戦いの物語が描かれている。

 ゲームボーイ時代からマシンパワーが向上したことを受け、表現力も大幅にレベルアップ。高速なテンポで繰り広げられるバトルは、非常に爽快感の高いものとなった。

 画面が色鮮やかになったことはもちろん、武器ごとに異なった固有モーション、敵にもしっかりと用意されたアニメーションなど、世界観の表現のみならずアップテンポなバトルを見事に実現している。

 現実に存在する“天下五剣”をモチーフにした“転身”システムや、“いざなみ”、“たけみかづち”といった実在の神の力を使って戦う“神降”システムなど、『ONI』シリーズに脈々と受け継がれる独自のシステムも健在だ。

 また、登場人物も鎌倉時代をモチーフとしていることから、源頼朝、源義経、武蔵坊弁慶といった史実に登場する人物をはじめ、“ぬらりひょん”や“りょうめんすくな”といった妖怪の類もキーキャラクターに組み込まれている。

 道中で幾度となく立ちはだかる“モンスター”も、のっぺらぼう、白坊主、野寺坊、旧鼠、風狸といった古今東西の妖怪勢で構成されており、作品の至るところに“和”のテイストが溢れていて、おどろおどろしさに恐怖しつつも引き込まれた子どもたちは多いだろう。

 仲間との掛け合いも豊富で、徐々に真相が明かされていく骨太なストーリーなど、RPG作品としても純粋に完成度が高い。魑魅魍魎が跋扈する妖しくも魅力的な世界観はそのままに、『ONI』シリーズとしてまさに正統進化を遂げた一作だ。

■前作から約80年の時を経て舞台はついに中国へ…『弁慶外伝 沙の章』

 やはり時代物というと“鎌倉時代”は非常に人気が高く、牛若丸こと源義経がキャラクターとして登場する作品も少なくはない。そんななか、源義経の幼き日のライバルとしても有名な武蔵坊弁慶を題材にしたSFCソフトこそ、1992年にサンソフト(サン電子)より発売された『弁慶外伝 沙の章』だ。

 本作は同社から過去に発売されたPCエンジンソフト『弁慶外伝』の正統な続編であり、前作から約80年後の世界が舞台となっている。

 いわゆる『ドラゴンクエスト』タイプのRPG作品であり、大国「元」の蒙古軍襲来をきっかけに、呪法を操る“闇の者”を交えた血みどろの戦いが繰り広げられていく。

 序盤は日本を舞台としたストーリーが展開されるが、後半になるとその舞台は中国大陸へと広がっていき、前作にはなかった新たな世界観が描かれる。

 PCエンジンからSFCというハードの進化はやはり凄まじく、戦闘のテンポアップはもちろん、術の機能性アップやバリエーションの追加、敵の行動ロジックが賢くなるなど、前作の改善点を交えた大幅なパワーアップが見て取れる。

 とくに本作のBGMは非常に評価が高く、日本編と中国編で戦闘曲がしっかりと異なるなど芸が細かい。また、裏技を使うことで前作のBGMを流すこともできるなど、シリーズファンにとって嬉しい演出を仕込んでいるのも魅力だ。

 タイトルにもなっており前作でもキーキャラクターとなった弁慶は、本作では操作キャラではないものの、戦闘中にランダム行動にて主人公をサポートするという形でしっかりと登場。

 前作からの流れを崩すことなく、時を経た新時代の冒険をパワーアップした演出と広大な世界観で描いた“和風”テイストなRPG作品である。

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