――そこから時を経て今回アニメシリーズ化されたわけですが、その前1998年には劇場版『スプリガン』が公開されました。あの作品に対してはおふたりはどんな印象を持っていましたか?

たかしげ:いや、あれは「すごい」以外に何がある!?っていう話なので(笑)。

皆川:ただ、最後に打ち合わせをしてからだいぶ時間が経ってからの公開だったので、忘れた頃にできあがったっていう感じだったんですよ。

たかしげ:だから当時から「これはきっとドッキリカメラで騙されているに違いない!」って言っていたんですよ(笑)。

皆川:できましたって言われてびっくりして、実際に観てさらにびっくりして。

たかしげ:そこからまただいぶ時間が経って今回のアニメ化だったので、それもびっくりしました。でも今回のアニメはあの劇場版とはまったく違うところに重点を置いているので、また違う面白さがありますよね。

皆川:僕も今回のアニメはずっと観ていましたね。

たかしげ:毎日2周するくらい観ましたから(笑)

アニメ『スプリガン』場面カット
©2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館/スプリガン Project

――今回のアニメシリーズは原作のエンタテインメントとしての盛り上がり方やテンポ感、スピード感みたいなものがよく表現されている感じがしました。

たかしげ:これ、友達や作家さんみんなから言われるんですけど、内容的には原作から結構変わっている部分があるのに、観終わった後の感覚が漫画の読後感とかと変わらないって。それがすごいって言ってもらえますね。

皆川:ノリとか間の取り方がまさに一緒なんですよね。だから、よっぽど『スプリガン』を読んでくれている人が作ったんだろうなって。たぶん僕らよりも『スプリガン』に詳しいと思う(笑)。

――確かにめちゃくちゃ好きな人が作った感じがしますよね。

皆川:レイアウトから何から、観ていて「こうすればよかった」って後悔する場面もありましたから。本当にすばらしいなと。

たかしげ:そういう意味では脚本家の方も好きでいてくれたらしいし、絵を描いているみなさんも結構好きな人が集まってくれたらしいので。SNSとかで「やりたい」って手を挙げていた方も何人かいらっしゃいましたからね。

皆川:だから「ありがとう」という感じですよね。僕の中では『スプリガン』って、確かに自分で作った子供なんですけど、もうとっくに大人になって結婚して独り立ちしたような感じなんですよ。その子どもが国民栄誉賞をもらったみたいな感覚がありますね。「おめでとう!」みたいな(笑)。

アニメ『スプリガン』場面カット
©2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館/スプリガン Project

――アニメを観たときに改めて面白いなと思ったエピソードはありますか?

たかしげ:話が面白いって言っちゃうと自分を褒めちゃうことになるのでちょっと違うんですけど、森の話は結構、絵が強かったですね。知っている人はみんな感心してる。こんなになるんだって。ある友達はプロジェクターシステムで観たときに音がちゃんと四方で動くからゾワゾワするって言っていました。怨霊に囲まれる感じ。

皆川:僕は「忘却王国」ですね。あれ、正直地味な話なんですよ。それをあんなにかっこよく作ってくれたというのは感激しましたね。あと「水晶髑髏」のボーの動きもすごかった。漫画でも確かに描きましたけど、こういう感じになるんだって。ボーがぐるぐる回っていて、朧が「いつまで回ってるつもりですか」って。「これ使ってくれたんだ」っていう(笑)。何から何まで漫画のままやってくれてるっていうのが感動的でしたね。

たかしげ:やっぱり小林寛監督のバランスの取り方がうまいんですよね。

アニメ『スプリガン』場面カット
©2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館/スプリガン Project

――声優陣の演技についてはいかがですか。

皆川:僕は初回のアフレコを見学させてもらったんですけど、そこでまずみんなが台本を読むじゃないですか。それに対して音響監督から指示が出るんですけど、その時点で「これでいいじゃん」って思っていました(笑)。

たかしげ:アドリブもすごかったですね。帰らずの森で芳乃が暁と「おじさん」って問答する辺りの会話があるんですけど、あれはアドリブなんです。音響監督から「適当に会話で埋めてください」の指示で、ほぼ一発であれができていたんで、すごいなと思いました。

――あのシーンは本当に芳乃と暁というキャラクターが出ていますよね。

たかしげ:そうなんですよ。「そう言うよね」っていう。リアクションもそうだよねっていう感じだったし。声優さんってすごいなって。

――劇場版に参加されたキャストの方も今回登場していますね。

たかしげ:うん、朧役の子安武人さんと、劇場版で御神苗役だった森久保祥太郎さんが参加されています。

皆川:ネタバレになっちゃうけど、森久保さんに最後にあのセリフを言わせるのも面白いですよね(笑)。あれを元々主人公だった森久保さんが言うっていう。

――そのアニメが今度は地上波で放送されるということですが、その先の続きも気になります。まだまだ残っているエピソードがたくさんありますからね。

皆川:そうですね。そのためにもまずは今回、みんな観てくれたらいいなと思いますね。

アニメ『スプリガン』場面カット
©2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館/スプリガン Project

――最後に、今回のアニメで『スプリガン』に出会う新しいファンに向けてメッセージをお願いします。

たかしげ:とにかく作者がいちばん喜んでいますので、とにかく観てください。観て、楽しんで、この作品を前に進ませてください。続編をいちばん楽しみにしているのは原作者ですので。一緒に楽しんでいただければ、それが何よりの喜びです。

皆川:うん、とりあえず何でもいいからパッと観てもらえたら、面白いからたぶんずっと観てくれるはずなので。とにかく観てほしい。漫画は読まなくていいから、アニメを観てくれって思います。

たかしげ:そう、アニメのほうがいい出来なので(笑)。

Interviewer:小川智宏

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