ファイルーズあい
アナーキー役のファイルーズあい
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 あらゆるオタク文化が排除された2011年の日本を舞台に、「好きなものを、好きなだけ好きと言える」世界を取り戻すべく現れた魔法少女たちを描く『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』。
 LAを拠点にアート活動を始め、有名ラッパーなどとコラボしてきた新進気鋭のアーティストJUN INAGAWAが原案の異色アニメだ。若き革命者を支える魔法少女・アナーキーを演じるファイルーズあいに、多趣味な私生活や、声優としてのこれからを聞いた。

■「喉というスピーカーから音を出してる」

『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』(以下『マジデス』)はオタクが弾圧を受けている世界が舞台。ファイルーズが演じる魔法少女のアナーキーは、その名の通り、反骨的で混沌とした情熱を持つ女の子だ。オタク文化を守るため、謎の勢力と壮絶な戦いに挑んでいく。

 そんな役柄と同じく、多趣味なことでも知られるファイルーズは、オタク活動で繋がった友人も多い。

「新しいジャンルや作品を好きになるごとに、どんどん友達の輪が広がるのが、オタク趣味の良さのひとつですよね。オタク友達と作品の考察やディスカッションを重ねるのも楽しいですし、自分の好きなキャラの絵を描いて独自の表現したりとか、 そういうことをするのが好きです」

 幼い頃から、イラストを描くのが好きだったという。声優も幼少期からの夢だったが、他にも憧れた職業があった。

「私、声優になれなかったら、魔女になりたかったんです」

 大人になった今でも、その想いを抱き続けている。
「子どもの頃は、空を飛んだり、動物とお話したいって思ってたんです。それから図書館に行って、魔術書とか、 魔女になるための方法をいっぱい調べたりして。すごくワクワクする、ときめく毎日を送ってました(笑)。
 今でも憧れの気持ちはあって、ウィッチクラフトについて調べたり、幼少期には難しくて読めなかった本を買い寄せたり。白魔術や黒魔術、ハロウィーンの起源を勉強したりもしています。ハロウィーンの時期は、家の中でロウソクを焚いて過ごしますから(笑)。 あとは、お月様の満ち欠けによってアロマを変えてみたりとか。我流なんですけど、ちょっとだけでも神秘的な魔法の世界に包まれるっていうのが好きなんです」

愛するオタク文化を取り戻すために戦う主人公・オタクヒーロー(CV.古川 慎)
©Magical Destroyers Committee

 個性的なプライベートも充実させているが、忙しい日々を送る今、オンオフの切り替えはどのようにしているのか。

「こういう方法がありますって言えたら、職人さんみたいでかっこいいなって思うんですけど、ないんですよ(笑)。いい意味で、頭の切り替えが上手にできるタイプなんだと思います。演技中も、冷静な自分が常に頭の中にいるので。
 声優が演じる時は、台本を持って動画を見ながら喋るわけですが、そのキャラクター自身は台本なんか持ってないし、モニターを見ながら喋ってるわけでもない。私はあくまでも、キャラクターの代弁者なんです」

 少し意外だ。ファイルーズの熱量ある演技から想像していたのは、役に没入するようなアフレコだったからだ。

「完全に役に入り込んじゃうことは、あまりないですね。私は自我が強い人間なので(笑)。私の今まで経験してきたことや引き出しを使って、そのキャラの言葉を代わりに伝えられるように、喉というスピーカーから音を出してる、そんなイメージです」

■「キャラクターって、我が子のように大切で愛おしい」

 役を演じる上で大事にしているのは、「初心」だという。

「最近は、ありがたいことにたくさんお仕事させていただいて、1日に何人ものキャラクターたちの声を代弁させてもらっているんです。夢見ていたことが叶って、本当にうれしいんですが、人間って忙しくなってくると心の余裕がなくなっちゃったりしますよね。
 今は家でも台本チェックや、翌日の準備などで、24時間お仕事をしているような状態なんです。でも、絶対に初心を忘れてはいけないなと思っていて。例えば、1日の中で別作品のキャラクターを3つやることがあったとしても、そのキャラにはそれぞれ生みの親がいて、たくさんの人たちが関わって作り上げている。そこには大変な苦労があるんですよね」

 プロ級のイラストを描くことでも知られるファイルーズ。「苦労して生み出したキャラクターって、本当に我が子のように大切で愛おしいものなんです」と、作品への想いを語る。

「だからこそ、どんなに忙しくても、絶対に雑な仕事はしないと決めています。クリエイターの方たちが、大事な子どもを私に任せてくれた。そのことを胸に刻んで、現場に臨んでいます」

 弱音を吐くことはないのだろうか。

「忙しくなると、愚痴を言いたくなっちゃう気持ちもわかります。でも、私はこうなりたくて、がむしゃらに頑張ってきたので、今はただただ幸せなんです」

 仕事が好きなだけなんですと、真っ直ぐに答える。憧れだった声優業を続けていくためには、健康管理も怠らない。

私、すごい早寝早起きで。夜12時半には寝て、 朝7時には起きるんですね。そうすると心の余裕も生まれますし、朝バタバタしなくて済むので。忘れ物しちゃったり、メイクが中途半端だったりとかで、何かが欠けたまま一日を過ごすのが嫌なんです。朝早く起きるとそれだけお得だし、夜更かしするとSNSをずっと見てしまったり、誘惑が多いんですよ(笑)。朝に自分のやるべきタスクをこなして、 積み残しをしないまま1日を気持ちよく終えるっていうのが好きなんです」

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