3月26日に、69歳を迎える井上和彦さん。その約50年に渡るキャリアの中から、井上さんが演じるキャラクターの深みとおもしろさを考察した!
■はたけカカシの「雷切」がカッコ良かった
山岡士郎、ニャンコ先生…昼行灯系のキャラ!
しかし、井上さん演じるキャラクターの昼行灯ぶりは、カカシが最初ではない。有名なのは、88年〜92年に渡り、放送された『美味しんぼ』の主人公・山岡士郎だ。東西新聞の記者である山岡は、一匹狼…というよりは、ギャンブル好きなただのぐーたらな男。しかし、話題が食べ物、料理のこと、とくに海原雄山のことになると、途端に覚醒! 語調鋭く、感情あらわにすらなる。この昼行灯というか、二面性を活かした役という意味では、カカシ先生の芝居のルーツは、山岡なのかもしれない。
また、『夏目友人帳』(08年~)で「妖」が見える主人公・夏目貴志の家に居候する、ニャンコ先生役も忘れがたい。ニャンコ先生は夏目の「用心棒」を自称し、大体短気な発言をする本作のマスコット的猫キャラ。しかし、これは仮の姿で、実態は「斑」という白く巨大な姿を持つ、強力な妖。井上さんはニャンコ先生とこの斑の声を、かたやコメディリリーフとして軽みを、かたや作中最強の妖としての凄みを見せつけて演じ、別の声優が演じているのかと錯覚するほどなのである。